人々が普通の観光で訪れることができる世界最北の地がどこかご存知ですか?
それは人口2000人・白熊3000頭といわれ、北極点からわずか1000km程度しか離れていない未開の地、スピッツベルゲン島ロングイェールビーンです。
世界中のアドベンチャー好きやコアな旅行者を中心に、死ぬまでに一度は観てみたい景色としてひそかに近年話題となっている場所。
今回はそんなロングイェールビーンをこれから観光する方が、上陸前に是非頭にいれておきたいポイントをまとめてみました。
1. 地理
ロングイェールビーンは北緯78度、北極圏に位置する人口1000人以上の街としては世界最北の街になり、スヴァールバル諸島のスピッツベルゲン島にあります。
国際法上はノルウェー領になっていますが、スヴァールバル条約により、日本を含む加盟国国籍の住人は自由に移住、商業を営んでもいいということになっており、ノルウェー政府による直接統治は受けていません。
そのため、ノルウェーから移動する際であっても出発地で出国スタンプを押され、逆にスヴァールバル諸島入域の際の入国スタンプはないという世界的に見て珍しい場所です。
人口は約2000人、その過酷な環境から人口の1/3が毎年入れ替わると言われるほどで、現在は日本人の居住者も数名います。
2. 天気
ロングイェールビーンは北緯78度と北極圏に位置していることから極寒になる、と思われる方も多いと思いますが、スヴァールバル諸島西側を流れる暖流の影響によって、同緯度の他エリアと比較すると気温の下げ幅は少なめ。
とはいっても、平均最高気温は夏季に記録する7〜8度で、10度を超えることはほとんどなく、また冬季は2−3月に最低平均気温が最も下がり、−12〜−15度程度。
通年を通して寒冷であることには違いありません。
雨量は極めて少なく、年間降水量が250mm程度。これは東京の梅雨時1ヶ月分と殆ど同じ程度なため、非常に乾燥した地域であることがわかります。
しかし、天候が急変することもあり、特に冬季では−40度を超えたという記録も残っているため、ありとあらゆる天候に耐えうる用意をしておくことは大切でしょう。
この項目で使っている写真は、ロングイェールビーンから30Kmほど離れた場所にスノーモービルを使って移動した際の写真。
魔法瓶にはいったお湯を空中に撒き散らすと、その瞬間に凍結し氷の粉となりました。この時の気温は−25度程度。山々で起伏が激しいこともあり、ロングイェールビーンの街を離れると気温も大きく変わります。
3. 交通
ロングイェールビーンには公共交通機関がありません。また、ロングイェールビーンの周辺にしか道路も整備されておらず、特に冬期は道路が使えないこともあって主要な移動手段はスノーモービル。
人口2000人にしてスノーモービルの数は4000台以上登録されています。
しかしながら、ロングイェールビーンの街はとても小さく、全て徒歩圏内で移動できる範囲に収まっており観光には問題なし。
また空港と街は航空会社と自治体が共同運営している空港シャトルバスが出ているため、空路で移動する方でも心配不要です。
ちなみに、白熊対策として、ロングイェールビーンの街を出る際には銃の携帯が義務付けられているため、個人的に街を離れて遠出することは、特別なライセンスを持っていない限り不可能。
原則はガイド付きのツアーに参加することになります。
4. 治安
人口2000人の街、住人は殆ど皆知り合いで、訪れる人は皆アドベンチャー好きな観光客ということもあって治安の心配は一切ありません。
唯一治安を脅かす存在といえば白熊。過去の乱獲などにより現在ではかなり数を減らしてしまったものの、人口2000人に対して3000匹ほど生存が確認されています。
とは言ってもロングイェールビーンの街中に出るということはまずなく心配は不要です。
ただし、街を離れると白熊の目撃情報もあり、近づくと極めて危険なため、単独で街を離れたりするようなことは決してしないことをお勧めします。
もちろん観光客は購入できませんが、街中にはこのように猟銃を売っているお店もあり、身の安全は自分で守るという極地の原則を感じさせます。
5. 観光
もともとは炭鉱採掘で発展したロングイェールビーンですが、現在は極地研究の拠点であると同時に、主な産業収入は観光業に頼っています。
その特殊な地理的条件から観光客が多いとは言えませんが、それでも年間旅慣れた旅行者や極地を自分の目で見て見たい冒険心溢れる旅行者を中心に人気となっており、特に北極海クルーズなどのツアー船によるビジター数が増えています。
観光のメインはその極地を感じられる雄大で力強い大自然を堪能出来るアクティビティ系が中心。
夏場や氷河クルージングやホエールウォッチング、ハイキングや釣りなど、冬場はスノーモービルや犬ぞりツアー、オーロラ観測などが人気です。
またロングイェールビーンの中心部には北極圏開拓の歴史や固有種の生態系、炭鉱で栄えた時代の生活などについての展示が充実しているスヴァールバル博物館を始め、世界最北のスーパー、世界最北の教会、など世界最北と冠する場所が多くあります。
ロングイェールビーン で楽しみたい観光については別記事で詳しくまとめています。
また、現地で申し込み可能な全アクティビティについてはこちらのHurtigrutenのサイトで参照可能です。
実際にアクティビティ申し込みを検討している方は、希望日に催行があるかどうか、料金などを確認することができます。
6. 宿泊
観光客を悩ませる1つの問題が宿泊施設事情。ロングイェールビーンでは資源も限られ、また新規開拓も制限されていることから、宿泊施設の数はわずか両手で数えられてしまうほど。
特に近年の極地ブームもあり、旅行希望者に対して室数が圧倒的に不足している状況。そのため、ホテル料金は常に非常に高くっており、夏季など旅行シーズンは一番安いセルフサービス式のアパートメントタイプでも2万円を超えることが当たり前。
フルサービスのホテルだと小さなツインルームでも4万円台にまで高騰することもあります。
そのため、旅行を計画する際にはまず宿泊施設の確保、そしてその後航空券の確保という順番が鉄則です。
7. 物価
その極めて高い宿泊料金から物価もものすごく高いのではないかと想像してしまいますが、物価は抑えめ。
その理由は、ノルウェー領であるにもかかわらずノルウェーの法律が一切適応されないため、高い税率もかからないというもの。
そのため、極地でありながらノルウェー本土と比べても物価は同じ水準かむしろやすくなっています。
特にレストランなどでは税率が一切かからない恩恵を感じることができるので、気兼ねなく外食を楽しんでください。
8. 言語
ロングイェールビーンはノルウェー領であり、住民の多くがノルウェー人であるため公用語はノルウェー語。
ですが、現在は観光依存が大きく、また住民の半数以上が世界各地からの移住者ということもあり、英語は100%通じます。
英語で最低限のコミュニケーションが取れるのであれば、言葉の心配は一切いらないでしょう。
9. 通貨
ロングイェールビーン はノルウェー領であるため、法定通貨はノルウェークローネとなっています。
街の中に両替所のような場所はほとんどないので、実際に訪れる際にはクローネの準備をしておいてください。
実際には、ほとんど全ての場所で少額であってもクレジットカードの利用が可能。もちろん空港シャトルバスやホテル、レストラン、ツアー会社などは100%クレジットカード対応です。
JCBはいうまでもなくアメリカン・エキスプレスカードも利用できない場所が多いので、VISAカードやMasterカードを用意しておくことをお勧めします。
10. アクセス方法
最後になりましたが、肝心のアクセス方法を紹介します。
北極圏に位置し、周囲をバレンツ海やグリーンランド海に囲まれたスピッツベルゲン島ロングイェールビーン。
アクセス方法は、ノルウェー各地を出発する北極圏クルージングツアーに参加して寄港するか、個人旅行として航空機を使って上陸するかの2通りがあります。
大手によるクルージングツアーは主に6−9月に催行されますが、3月を過ぎたあたりから様々な会社による船がで始めますので、ツアー参加を希望する方は旅行会社をチェックしてみてください。
航空機を使う場合、日本にも就航があるスカンジナビア航空やノルウェーエアシャトルがオスロやトロムソを起点として週に5便程度通年運行しているため、こちらを使うことになります。
航空券は意外にもさほど高くはなく、北欧旅行の延長線上で購入できる額。
ですが、冬季などは運行していない曜日もあり、また前述の通り宿泊場所が著しく限られているため予約時は宿泊場所の確保と平行して行うようにしてください。
航空券を検索する際にはスカイスキャナーの目的地に欄に「ロングイェールビーン 」と入力してみてください。
詳しくはこちらの記事で解説しています。
最後に
いかがでしたか?
ロングイェールビーン観光の際に頭に入れておきたいポイントをまとめて紹介しました。
実際に訪れて見ると、空港に上陸した瞬間から何から何まで初体験というような刺激の連続。興奮冷めやまぬままものすごいスピードで滞在日が過ぎていきました。
おすすめの旅行時期は日が長くなりはじめる3〜5月。まさに北極圏らしい冬の絶景と非常に長い1日を同時に楽しめます。
ですが真冬であってもオーロラなど暗いからこその楽しみが多くありますし、何よりロングイェールビーンでは1日に欲張って色々なことをしたい観光客のために、かなり遅い時間や夜にまでモービルツーアや犬ぞりツアーなどを催行しており、いつ訪れても密度の濃い時間を過ごせることは確実です。
最後になりましたが、私が現地でハイライトをタイムラプスにまとめてみましたので、どうぞごらんください。
ロングイェールビーン、今すぐにでも行きたくなってきませんか?
ロングイェールビーンは開発が制限されていることもあって、ホテルの数が需要に比べて非常に少なく、また一般住宅もほとんどないためAirbnbの物件も限られています。
そのため、通年にわたって旅行者の宿泊場所確保が難題。そのため、個人旅行をする際には宿泊場所の予約と航空券の予約を並行して進める必要があります。
航空便はノルウェー首都オスロや北極圏の最大都市トロムソを起点に、スカンジナビア航空やノルウェーエアシャトルなど複数会社が運行しています。
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