北欧スカンジナビア半島のさらに北、北極点から僅か1000kmしか離れていないスピッツベルゲン島ロングイェールビーン。
世界最北の街とされ、人間が生活できる限界の環境とその見事な大自然を見に、一部のかなりコアな旅行者を引きつけています。
そんな極地でしか出来ない体験はたくさんありますが、是非経験したいのが犬ぞり。
よく観光地で見られる犬ぞりは、お客さんがかなり守られ絶対に安全なものばかりですが、ここロングイェールビーン発の犬ぞりツアーはかなりワイルドで体力勝負のものになっています。
そんな本格的な犬ぞりツアーに今回参加してみたのでその中身を紹介します。
1. 犬ぞりツアー
犬ぞりツアーと聞いてどういう想像をしますか?
あるいは今まで犬ぞりツアーに参加したことある方はどのような体験をしましたか?
通常観光地で見られる犬ぞりツアーというと、所要時間は約1時間程度。4−6人のお客さんが同時にソリに乗り、ガイドによって操作される犬たちが引くそりに乗りながら景色を楽しむ、なんてものが多いのではないでしょうか。
そんな観光客を甘やかす犬ぞりツアーはこの地には一見ありません。
今回参加した犬ぞりツアーは所要時間7時間、ソリを組むところから各自でやるというまさに本場を体験できる内容でした。
もちろんアクシデントもそれなりに多発。若いからこそできる本格アクティビティがロングイェールビーンにはあります。
2. 犬ぞり基地で犬と対面
ツアーピックアップのジープに乗せられホテルから約30分。犬ぞり基地に到着です。
車を降りた途端、野生のジャングルにいるかのような犬たちの声。その声にいきなり圧倒されます。
このツアーでは、ソリを準備するところからすべて各自で行います。まず到着すると、自分のパートナーとなる6匹の名前が紹介され、そして犬をソリにつけるためのロープワークを習いました。
ちなみにソリは基本2人1組で扱っていきます。
その後、まずはパートナー犬と対面。みなソリを引く犬ということで元気がいいのは共通ですが、それでも1匹1匹性格が全く違います。
ちなみにこの初対面が重要だそうで、こいつはダメだと舐められると最後の最後まで言うことを聞かないんだとか。
こんな姿を見ると、ビビらないわけにはいかないんですが、実はハスキーはものすごく忠誠心の高い賢い犬。
また人間との生活を何世紀にも渡り続けているため社会性がものすごい高い犬だと言われています。
左右の目が違うオッドアイもシベリアンハスキーではよく見られる特徴。とても凛々しい顔つきをしています。
ですので、人が寄ってくるとすぐになつき、信頼関係を作ろうと犬側からも寄り添ってくるくらい。
その顔つきからは想像もできないくらいの甘えん坊だったりします。
犬たちもソリをひきたくて仕方がないのか、準備運動に余念がありません。
自分のパートナー犬6匹と30分近く時間をかけそれぞれ挨拶をした後は、いよいよソリを準備していきます。
この6匹は常にグループとして同じそりを担当しており、その上下関係もしっかりと決まっているため、その順位に応じて位置関係は固定。
先頭左側につける犬がリーダー犬なんだそう。
犬小屋にいる犬を放し、先ほど習ったロープワークを使って弾き縄を固定、そしてソリへと結んでいきます。
ソリを引く前の犬は力が余っているので、その力はとてつもなく、両手でがっちり縄を持っていても体ごと持っていかれるような感じ。かなりのハードワークです。
準備ができたらいよいよ片道2時間半の長い長いソリの旅へ出発の準備です。
3. 犬ぞり出発
犬ぞりは1人が運転手として操作し、1人はソリの中で包まれて落ちないように潜り込みます。
写真をとるのはこのソリの中に潜っている人の仕事。操作中は全くそんな余裕はありません。
まず、幅10cm程度のソリ土台部分にたち、片足でブレーキ操作。出発停止の操作や方向コントロールは声で行います。
とはいってもそこは犬。言うことを聞かないこともあれば、後ろに人間がのっていることなんか御構い無しに全力疾走をするので振り落とされないようにしているので精一杯なのが現実。
とはいっても、フルスピードで走らせると先頭をいくガイドからきつく怒られるためなんとか頑張って制動します。
体重が軽い日本人だとそれはもう大変でブレーキをかけるだけでもかなりの重労働。
また登り坂の時は人間も一緒に漕いで犬たちをサポート。気づいたらマイナス30度近い天気の中汗だくになっていたり。
それでも、平地を走っているときはもう絶景の一言そのもの。まるで地球上にいるとは思えないような景色が延々を続きます。
4. チェックポイント
2時間ちょいソリを走らせたところで折り返し地点へ到着。雪の中に埋もれたシェルターがこちらにはありました。
実はここ、後で紹介する奇跡の氷の洞窟の入り口となっています。
犬たちをすべて鎖とクイで固定したのち、犬たちは肉の塊を与えられランチタイム。人間たちはシェルターに避難し、そこでランチをいただきます。
ちなみに極地のシェルターで食べるランチは、もちろん極地食。粉末状のものにお湯を入れて食べる宇宙食のようなものでした。
とはいっても極寒の中犬ぞりを走らせた後ということで、ものすごく美味しく感じるのは不思議なことではありません。
5. 氷の洞窟探検
ランチ後は奥に続く洞窟探検。こちらは氷河の中ということで通年にわたってこのような洞窟が存在するんだとか。ちなみに安全のため夏季には立ち入りができないとのこと。
自然が作り出した神秘的な光景が延々と続きます。
中は真っ暗なためヘッドライトのみの明かり。写真を撮るにはかなり厳しい環境ですが、ヘッドライトやスマホライトなどを駆使し、みんなで協力して絶景部分を照らします。
同じ氷とはいってもその密度によって色は様々。
一般的に青みが深いものほど古い氷だと言われています。
氷河期に作られた氷が今もなおそこにはあります。
スペイン人が「天然のシャンデリアだ」と言っていましたが、まさにその言葉がぴったり。
氷の層を見るといつ頃のものなのかが推測できるんだそう。今でも氷河期研究の貴重な資料として使われているそうです。
地球温暖化が進むとこういう景色がいつまで見られるのかがわかりません。
環境問題についても考えるいいきっかけになりました。
6. 犬ぞりで帰還
そして洞窟探検を済ませ、犬たちをしっかり休ませた後は来たルートを辿って帰還します。
犬ぞりに乗っているだけと聞くと楽そうですが、操作している方はとにかく重労働。乗っている方もそのものすごい振動に耐えつつ、カーブの時は重心移動をしたりととにかく大変です。
ちなみに、出発してから帰還するまでにソリ横転1回、振り落とされて転倒が2ケースあり、1名は肩を軽傷。
犬ぞりツアー、なめてはいけません。
7. 最後に
地球最北の街ロングイェールービンを出発する本格犬ぞりツアーを紹介しました。
基地に到着後は犬たちを犬小屋に1匹ずつ戻し、お別れのあいさつ。1日行動を共にしたこともあってなんとも感慨深いものがありました。
そして、一緒にツアーに参加したメンバーも少人数であるということも起因して、最後はなんとも言えない達成感と連帯感に包まれます。
今回参加したツアーはSpitsbergen Travelの犬ぞり&氷窟ツアー。とっても人気なツアーでありながら催行人数が少ないので参加を希望したい人は早めの連絡をお勧めします!
ロングイェールビーンは開発が制限されていることもあって、ホテルの数が需要に比べて非常に少なく、また一般住宅もほとんどないためAirbnbの物件も限られています。
そのため、通年にわたって旅行者の宿泊場所確保が難題。そのため、個人旅行をする際には宿泊場所の予約と航空券の予約を並行して進める必要があります。
航空便はノルウェー首都オスロや北極圏の最大都市トロムソを起点に、スカンジナビア航空やノルウェーエアシャトルなど複数会社が運行しています。
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