旅行者が到達できる極地の代表格、ノルウェー領スヴァールバル諸島。世界最北の街として、観光客が宿泊する事になるロングイェールビーンは北緯78度に位置しています。
そんなスヴァールバル諸島を旅行する人誰もが多かれ少なかれ脳裏に期待しているのが北極クマとの遭遇。
この記事ではそんなスヴァールバル諸島周辺の北極クマと遭遇のチャンスについて紹介します。
1. 北極クマの生態
現在地球上に存在する北極クマは推計2万〜3万頭と言われており、カナダ、アラスカ、ロシア、グリーンランド、そしてスヴァールバル諸島など北極圏に分布しています。
頭の先からお尻の部分までで約1−1.5m、2本足で立ち上がったときには3mにも到達するという非常に大きな哺乳類で、地球上に存在する肉食動物として最大と言われています。
自然界での平均生存年数は20〜30年。ですが、そこまで長生きできる個体は多くはありません。
北極クマは他のクマとは異なり、「冬眠」をしないというのが特徴。凍結した海の上(氷床)で、あざらしが呼吸するための穴の前で何時間も待ち狩りをする待ち伏せ型が得意技。大きな体でありながら1日に100kmも泳ぐことができるスイマーでもあります。
そんな北極クマ。寒い冬に大きな体を支えるために消費するエネルギーも多く、1週間〜10日に1匹のあざらしが理想的な栄養バランス。とは言え、あざらし猟がうまくいかずに1ヶ月もの間食事にありつけないものも多いのだとか。
そんな状況になると北極クマは魚や鳥、鳥の卵、ネズミなどなんでも食べれるものは食べる非常に「アグレッシブ」な状況となり、人間の住むエリアに近づいてくるのもこのタイプが多く、肉付きのよく無い北極クマほど「危険」な個体とされます。
2. チャンスは5%以下
スヴァルバール諸島(ロングイェールビーン)は極地とは言え、民間航空会社の運行もあり観光地としても人気のある場所。
多くの旅行者が北極クマをできればひと目でもみたいと念願しています。
ですが、実際には偶然北極クマを観光で見られる確率は極めて低く、現地ガイドでさえ見たことがないという人もいるくらい。
北極クマがよく見られる春に1週間滞在し、毎日様々なツアーに参加しても観光客が北極クマを見られる確率は5%以下、と言われています。
その理由はどこにあるのでしょうか。
3. 「人口より多い」の真実
スヴァルバール諸島に旅する人が誰もが聞くであろうこと。
「人口より北極クマの方が多い」
実は、これは半分事実でもあり誤りでもあります。
北極クマの生体数は各エリアごとにカウントされており、スヴァルバール諸島を含む北極クマは「バレンツ海エリア」として区分されています。
このバレンツ海エリアに生存しているのが約2500頭ほど、とされており、これがスヴァルバール諸島に住む人間の数よりも多いのです。
スヴァルバール諸島の人口の大半はロングイェールビーンとロシア系の人が多く住むバレンツブルグというごく一部の小さなエリアに集まっている一方、バレンツ海エリアはスヴァルバール諸島全域および一部ロシアとその周辺海域全てを含んだもの。
そう考えると北極クマの数は決して多くないことがわかるはずです。
また、現在は厳しい保護下に置かれており狩猟などは世界中で禁止されてはいるものの、地球温暖化による海氷の減少など様々な要因が重なって絶滅の危機に瀕している種の一つ。
このまま流氷や氷河の減少が続くと21世紀末には絶滅してしまうとされており、生体数は減少傾向というのが実際です。
4. 北極クマ「探し」は禁止
スヴァールバル諸島は観光客にも人気。現地観光ツアーも豊富で、オーロラ観測やスノーモービルツアー、犬ぞり体験、クルージングなど数多くのアクティビティが楽しめます。
中には北極キツネ探しやウェールズウォッチング、海鳥観察、セイウチ観察など、大自然ならではの自然動物を楽しめるツアーもたくさん。
その中で、絶対に見つけられないのが「北極クマウォッチングツアー」。スヴァールバル諸島=北極クマというくらい強いイメージがある動物にも関わらず、ツアー紹介の中から北極クマの単語を探すことはできません。
これは、北極クマ探しをツアーにすることが禁止されているだけではなく、北極クマを「探す」という行為そのものが禁止されているため。
また万が一偶然北極クマを見つけてもこちらから近くということも禁止されています。これは全て北極クマの生活圏を犯す行為として厳しく規制されているためです。
そのため、北極クマを見るのであれば偶然でなければならず、向こうから近づいてこないといけないということ。また見つけた以上それ以上は近づいてはいけない、そういう厳しい規制によって北極クマが保護されています。
5. 温暖化と北極クマの関係
北極クマの主な食餌はあざらし。
前述の通り、氷で覆われた海面の上を歩きながら、あざらしが呼吸するための穴を探し、そこで1日何時間もあざらしが上がってくるのを待つという待ち伏せ型の猟をする動物です。
温暖化によりこの氷床が減ると、それは直接北極クマがあざらしを獲ることができるエリアが減るということ。
そのため温暖化が進むと、北極クマの栄養状態の悪化だけではなく、人間の生活圏に近づいたりなど悪影響が広がってしまいます。
スヴァールバル諸島の周辺の氷床の現象は長期的な視点で見ると非常に速いスピードで進んでおり、現在の状況が進むと北極クマが見られなくなる可能性も高いと見積もられています。
6. 春が狙い目
そうは言っても、観光客としてどうしても自然の北極クマを見てみたい、と思うのが本音のところ。
最も目撃される頻度が高い時期が極夜明けの春。流氷や氷床も多く、餌を探そうと北極クマの活動レベルが最も上がる時期でもあります。
また、観光客が滞在するロングイェールビーン周辺で見られることは極めて稀で、現地ガイドによると観光客が北極クマを目撃できる可能性が最も高いのがピラミデン Pyramidenに向かうクルーズツアーとのこと。
とは言っても、稀には変わりないので最後は運次第。
7. 最後に
現在絶滅の可能性が指摘され、保護が積極的に進められている北極クマ。地球温暖化などの問題にも大きく左右される難しい課題に直面しています。
大きく力強く、そして好奇心旺盛な北極クマ。観光客が直接見ることは少ないとは言え、人々を惹きつけるこの魅力を今後盛大を超えて長い間楽しめるよう一人一人ができることを考えて欲しいと思います。
スヴァールバル諸島へ旅行を行く際には、そんな自然との付き合い方を学ぶ絶好のチャンス。運良く滞在できる場合には、現地の人から色々な話を聞きつつ、手付かずの自然を存分に楽しんでください。
ロングイェールビーンは開発が制限されていることもあって、ホテルの数が需要に比べて非常に少なく、また一般住宅もほとんどないためAirbnbの物件も限られています。
そのため、通年にわたって旅行者の宿泊場所確保が難題。そのため、個人旅行をする際には宿泊場所の予約と航空券の予約を並行して進める必要があります。
航空便はノルウェー首都オスロや北極圏の最大都市トロムソを起点に、スカンジナビア航空やノルウェーエアシャトルなど複数会社が運行しています。
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