ヨーロッパで最初にフルタイムでトラム運行をしたことで知られるサラエヴォ市電(トラム)。なんとトラム運行が開始されたのは1885年にまで遡り、地域の足として欠かせない存在になっています。
そんなトラムシステムはサラエヴォ紛争中に多大なダメージを受けたものの、現在は世界中からの支援によりトラムシステムも復興。
現在は世界中から集まった年代物のかなり「エモい」トラムが多く走っています。
動くトラム博物館とさえ言われるサラエヴォトラムをたくさんの写真とともに紹介します。
1. サラエヴォトラムの歴史
欧州で最初にフルタイムでのトラム運行が行われた場所として知られるサラエヴォ。オスマン帝国による統治からオーストリア・ハンガリー帝国へと主権が移って間もない1885年に開業しました。
オーストリア・ハンガリー帝国の首都であるウィーンにトラムシステムを導入するための試験的な運用が元になったといわれています。
その後1895年には全路線での電化が行われ、近代的なトラム網が構築されました。
20世紀に入りユーゴスラヴィア連邦の構成国になってからトラムシステムは急速な発展を遂げ、現在は最も賑わいを見せる旧市街エリアを中心に、鉄道駅やバスターミナル、そして紛争中は「スナイパーストリート」と言われたサラエヴォ新市街に路線網が延伸されました。
1990年代前半に起こったボスニア紛争中ではスナイパーストリートを走るトラムもセルビア人部隊による攻撃の対象になり、多くのトラムが運行中に被弾。乗客の犠牲はもちろん、当時運用されていたチェコ・スロバキアのタトラ社製トラムの多くが損壊しました。
紛争終了後は残った車両を中心に運転を再開。またオーストリア、チェコ、トルコ、オランダ、北朝鮮など様々な国からトラム車両の供与を受けたことから、現在サラエヴォで見られるトラムは非常に多種多様。
特に、他国ではほとんど目にしなくなったような1950年代〜80年代に作られた年代物のトラムも多く走っています。
2. 運用中のトラム
お待たせしました。それでは実際に運用中のトラムの一部を紹介します。
まずはユーゴスラビア時代のサラエヴォでもともと運用されていたTatra社製T2YU。1970〜1980年代にかけてプラハで製造されました。
現在はほとんどのトラムが広告などでラッピングされていることもあり、カラフルで様々な絵柄のものが運行しています。
2018年現在街中で見られる多くのトラムがこのK2YU型と呼ばれるものになっています。
トルコのコンヤという街から供与されたトラムも多く見られます。
ドイツのDuewag社によって1960年代に製造されたトラム。もともとはドイツのケルン市電として使用されていたものがトルコのコンヤに渡り、そこからサラエヴェ市電に供与されました。
もともとのコンヤ市電の塗装のもの(黄色と白で側面にKonyaと書いてある)も多く残っていますが、新塗装になっているものもあります。
かなり意外なものとしては、北朝鮮の平壌市電から供与されたタトラKT8D5K型トラムも運用中。
もともと平壌市電用のプロトタイプとして1989年〜1990年にタトラ社によって製造されたものです。
もちろん比較的新しい車両の導入も進んでおり、特に最近ではバリアフリーに対応した低床型のものが増えてきています。
こちらはシュコダ(旧タトラ)社製Satra II。チェコのブルノ市電から供与されたものとK2YUから魔改造されたものの2通りがあります。
低床化され、また行き先表示が幕から電光式になっています。
こちらは一見ほとんど同じですが、ショコダ(旧タトラ)社製Satra III型トラム。Satra IIとの違いは編成数の違いで、こちらは 輸送力を上昇させるために3両編成となっています。
3. 1960年製トラムに乗ってみた
最後に紹介するのは1960年代前半にウィーンで製造されたE型トラム。こちらも紛争後ウィーン市電より供与されたものです。
製造後60年が経ってもいまだにサラエヴォで現役運用中。60年間にわたって市民の足となっていたということを考えると感慨深くならざるを得ません。
外装は再塗装されたりラッピングされたりしているため綺麗ですが、いざトラム内部に入ればそこは60年代そのもの。
痛みが激しい部分もありますが、この年代のトラムは壊れないことで有名。まだまだ長く使われていくであろう雰囲気が漂っています。
運転席も近代的なトラムとは違い非常にシンプルで最低限。現代の車両のような高度な電子制御がないのが修理・改修しながら長い間使い続けられる秘訣なのかもしれません。
4. 最後に
いかがでしたか?サラエヴォを走るトラムの車両をメインに紹介しました。
実際のサラエヴォ市電の乗り方についてはこちらの記事で詳しく解説しているので、今後利用する機会がある方は参考にしてみてください。
多くの国ではもう見られないような貴重なトラムが今も現役で走るサラエヴォ。そんな「動くトラム博物館」が見られるうちに足を運んでみるのも面白い旅の形かもしれません。
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