ボスニア・ヘルツェゴヴィナ南部、ヘルツェゴビナ=ネレトヴァ県に位置するポチテリ Počitelj。
ネレトヴァ川沿いにあるオスマン帝国時代の建築物が多く見られる街として知られ、一大観光地であるモスタルから30kmと日帰りで訪れる人が多い人気観光地でもあります。
そんなポチテリの街で楽しめる絶景や街並み、そして気になる代表的な観光スポットを紹介します。
1. ポチテリという街
現在のポチテリは石造りの建築物が多く見られる要塞都市で、中世、そしてオスマン帝国時代に特にその発展が顕著だったことで知られています。
この街が初めて文献上に登場するのは1444年にまで遡り、その当時はアラゴン王国や神聖ローマ帝国の皇帝が所有していたんだとか。
実際にポチテリの街が要塞都市になったのは1463-1471年のハンガリーの駐留軍が統治していた時代で、その当時は戦略的に非常に重要な場所に位置する街と考えられていました。
その後18世紀から19世紀にはオスマン帝国領としてさらに発展。現在見られる多くのオスマン建築はこの時代に建てられたものです。
19世紀末にオーストリア・ハンガリー帝国がこの場所を獲得すると、その後は戦略的重要性を失いさらなる街の発展がストップすることに。これが功を奏して当時のオスマン建築物がそのままの状態で残されました。
しかし残念ながら、その当時の建物はボスニア紛争中にクロアチア軍によって攻撃され、当時の歴史的な建物の多くが損傷、倒壊。
またその際、多くのボシュニャク人(オスマン帝国に起源を持つイスラム教徒)が殺害、もしくは強制収容所へと送られました。
そんな豊富で深い歴史がありながら、非常に悲しい歴史も背負っている街がポチテリ。
現在は世界中からの支援により古い街並みの大部分が復興し、現在はヘルツェゴヴィナにある主要観光地の1つとして徐々に知名度が高まってきています。
現在はユネスコの文化遺産にも登録され、またボスニア・ヘルツェゴヴィナ政府による保護の対象となっています。
2. ポチテリの絶景
ポチテリはネトレヴァ川に沿って山肌に発展した要塞都市。そんなポチテリの絶景を展望するには、丘の上からが一番です。
世界で最も冷たい水としても知られるネトレヴァ川の水は澄み切っており、天気がいい日にはエメラルドグリーンに輝きます。
そんなネトレヴァ川とは対象的に、オスマン建築は白や灰色の瓦屋根。そんなコントラストも街の景色をより際立たせてくれます。
一方、ポチテリの旧市街周辺には今もクロアチア人が多く住み、そのような建物はオレンジ色の屋根の色が特徴。
ポチテリの山の上から見る方向を変えると大きく景色が変化します。
現在は人口の約70%がボシュニャク人、20%弱がクロアチア人。紛争後も難しい関係が続いているのは事実のようですが、徐々に融和が進み紛争前のように皆が共存できる環境に戻ることを願うばかりです。
ポリテリの通りは街の立地からも分かる通りほとんど全てが階段通路。石畳もオスマン帝国時代にもともとは造られたものがそのまま残っていたり、修復されたり、となっているそう。
仕事が限られていることもあって、このエリアに住む多くの人が現在は高齢者ということで、生活環境はなかなか厳しそうです。
紛争による物理的・精神的ダメージはいまだに深いようで、社会・経済状況は決していいとは言えないボスニア・ヘルツェゴヴィナ。特に地方では深刻で、人材流出が止まりません。
このポチテリの街を二度と危険にさらさず、そして将来へと残し続けていくためには観光というのが大きな役割を担っていくことは間違いなさそうです。
街の下側がら街並みを見上げるとこんな感じ。
街は非常にコンパクトで、一番下から荒城が見える上までだいたい歩いて15分の距離です。
3. 見どころ
ポチテリは非常に小さな街で、30分もあれば一周全てを見て回れるほど。これといって大きな博物館などもないので、10分程度で早足で駆け抜けることも可能です。
ですが、15世紀から続く街で見所はたくさん。一つ一つの建物に深い歴史が刻まれています。
ポチテリで観光名所とされている場所はいくつもありますが、その中の代表的なものを紹介します。
観光地図はこちらで公開しています。
3-1. Hadji-Alijina mosque(モスク)
ポチテリで最も重要な建物であり、シンボルでもあるのがHadji-Alijina mosque(別名 Šišman Ibrahim-immersed Mosque)。
16世紀に建築され、それ以降ポチテリに住むボシュニャク人にとっての信仰の中心となってきました。
現在のモスクは紛争後の2002年に修復されたものになっています。
観光で訪れる場合、内部見学は有料ですが美しい石造りのドームを持つモスクは必見です。
3-2. Sisman Ibrahim Pasha Madrasa (イスラム教神学校)
モスクのすぐ近くにはイスラム教学校があります。
こちらは1660年に設立、特徴的な青銅でできたドーム屋根は建設当時のまま残っている貴重なものです。
3-3. Haman (トルコ風呂跡)/ Han (宿舎跡)
ポチテリの街の麓にあり、2つの青いドーム屋根が特徴のHaman。17世紀にイスタンブールより送られたトルコ人技術者によって建設されたとされています。
このHamanの横にはHanと呼ばれるインがあり、こちらも同じく17世紀に建てられたもの。
いずれもボスニア紛争中に大きなダメージを負いましたが、現在は復旧作業が行われています。
3-4. Gavrakanpetanović house(アートハウス)
モスクの向かい側にある大きな複合建築がGavrakanpetanović house。ボスニア紛争中に火が放たれ破壊されましたが、2003年に元の形に復旧されました。
16世紀後半に建てられたポチテリを代表する居住のための建築であると同時に、ポチテリで唯一男女別の部屋があったことでも知られています。
1961年から1975年にかけてイタリア人画家を含む多くのアーティストが南東ヨーロッパから移住し、この建物に住み着いたことでアートハウスとも呼ばれており、現在も内部や建物周囲では多くの画家が展示をしたり販売している光景を見ることができます。
現在内部はインターナショナルアートコロニーとして美術品や写真、ポチテリの歴史に関する展示が行われています。
3-5. Kulina (Kula) / Pasha’s Bastion(荒城)
ポチテリの街を見下ろす丘の上には大小3つの要塞があります。
現在はいずれも荒城となっていますが、観光客にも一般開放されておりそこから見下ろすポリテリは一生の思い出になるもの。
特に街の北部にあるKulina (Kuna)と呼ばれている荒城からの絶景が最もポチテリを代表する景色(トップ画の写真)。
足場が悪く、また断崖になっているため訪れる際には安全には十分に気をつけてください。
4. 最後に
いかがでしたか?
今回はヘルツェゴビナにあるオスマン建築が多く見られるポチテリの街を紹介しました。
モスタルから30kmの場所にあり、日帰り旅行先としても人気。特に丘の上にある荒城から臨む街並みやネレトヴァ川の眺めは一生の思い出になる絶景です。
是非ポチテリの持つ600年にわたる歴史、文化、そして紛争がもたらしたものを学び取るためにも、ヘルツェゴヴィナ地方を訪れる際には実際に足を運んでみてください。
モスタルに泊まるなら是非オススメしたいのがGuest House Goa。
ファミリー経営の小さなゲストハウスですが、モスタルで最も部屋からの眺めがいいことでコアなトラベラーから知られている穴場だったりします。
もちろん部屋は綺麗で、ホストのホスピタリティも最高レベル。そして何より、ここで食べられるボスニアんブレックファストは、ホストによる手作りとは思えない非常にクオリティの高い料理だと評判です。
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今年の夏バルカン半島を旅する予定の者です。
今回eurotravelerさんの記事を読んでポチテリに興味が湧きました。ただ、行き方が調べてみてもわかりませんでした。もし可能であればどのようにしてポチテリに行ったのか教えていただきたいです。
コメントありがとうございます。
興味を持っていただいたようで嬉しく思います。
一番簡単なのはツアーに参加するので、モスタルから毎日様々な旅行会社がヘルツェゴビナを回る日帰りツアーを組んでいます。ただこの場合ポチテリ滞在時間は20−30分程度になります。モスタル到着後に観光案内所やホテルなどに問い合わせてみてください。
もしご自身で行かれる場合にはタクシーかバスになります。
バスの場合11時10分(2019年7月現在)モスタルのEast stationから Capljina方面のバスに乗車し40分程度です。
帰りのバスは ポチテリを2時45分頃に通るバスにのって戻ることになります。
尚、ポチテリは正式なバスステーションではないためバスのタイムテーブルには表示されません。
そのため行き先は「Capljina」で検索してください(Capljinaとポチテリは5分強の距離となっています)。
https://busticket4.me/EN/1276-1542-132-0-0/0-1/Mostar-Capljina/28-04-2019/
タクシーの場合片道2500円程度ですが、現地で待たせる場合は値段の交渉が必要になるかと思います。
ありがとうございます。
色々検討してみます。 čapljinaには電車もあるようですね。また質問させていただくかもしれませんが、よろしくお願いします。