ボスニア・ヘルツェゴビナは紛争後に2つの地域によって構成される連邦制となっており、鉄道網もそれに伴い、ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦鉄道(ボスニア語: Željeznice Federacije Bosne I Hercegovine: ŽFBH)とスルプスカ共和国鉄道(Жeљeзницe Peпубликe Cpпcкe – ЖPC)の2つが運行する地域によって旅客営業を担っています。
観光客が鉄道利用する場合には前者のŽFBHになることが多く、特に首都サラエボ〜モスタル路線は有名な観光地ということもあって世界中から多くの観光客が利用しています。
今回は、初めてボスニア・ヘルツェゴビナを訪れる観光客でも心配がないようŽFBHの利用方法を紹介します。
1. サラエボ/モスタル中央駅
まず多くの観光客が利用する駅としては、サラエボ駅、モスタル駅があります。簡単に駅の立地や特徴を紹介します。
サラエボ中央駅
サラエボ中央駅はサラエボ市街の外れに位置するサラエボのターミナル駅。
隣接してバスターミナルもあり、また駅周辺にはカフェやレストランなどが複数軒を連ねていることから、比較的人通りの多い賑やかなエリアになっています。
駅自体は旧ユーゴスラビア時代に作られ、その後のサラエボ包囲(ユーゴ紛争)中に大きなダメージを受けたもののEUの支援により2006年に修復されました。
駅周辺は不法移民や難民が集まっていることで知られ、炊き出しなども行われたりしています。日中はさほど問題にはなりませんが、夜間はあまり治安がいいと言える場所ではないので注意してください。
駅構内には有料のトイレ、カフェ、駅窓口など一通りの施設は揃っており、列車発車時間までは構内で待つことが可能です。
名称(英語): Railway Station Sarajevo
名称(ボスニア語): Željeznička stanica sarajevo
運行トラム番号: 1,4
住所・マップ: Put života 2, Sarajevo 71000 ボスニア・ヘルツェゴビナ
モスタル中央駅
モスタル中央駅はヘルツェゴビナでは最大の旅客ターミナル駅になっており、モスタルが一大観光地であることから利用客の大部分は観光客になっています。
駅に隣接してバスターミナルも隣接しており、こちらからクロアチアの人気リゾートであるドゥブロブニクやモンテネグロのコトルなどでの国際バスも多く出ているため、深夜から早朝まで観光客で賑わっています。
サラエボ駅同様、モスタルの駅も市街地の外れに位置しており、旧市街中心部までは徒歩約15分。
歩けない距離ではありませんが、スーツケースなど大きな荷物を持っている場合にはタクシーの利用をお勧めします。
名称(英語): Railway Station Mostar
名称(ボスニア語): Željeznička stanica mostar
住所・マップ: Trg Ivana Krndelja 1, Mostar 88000 ボスニア・ヘルツェゴビナ
2. タイムテーブル・料金
ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦鉄道の運行本数は少なく、各地に1日1−3本程度の運行となっています。
駅の入り口や駅員窓口にこのような発車時間と行き先、プラットフォーム番号がかかれた張り紙がされているため、現地ではこちらを参考にしてください。
- ODLAZAK: 出発
- DOLAZAK: 到着
- BROJ BOZA: 列車番号
- RELACIJA: ライン(始発〜終着)
- SAT: 時間
- MIN: 分
- Peron: プラットフォーム
これから旅行を計画するという方は、鉄道会社公式ページからも確認可能です。
料金は距離に応じて変動。片道切符と往復切符があり、往復の場合には20%割引が受けられます。また各駅や特急といった種別はなく、所要時間に関連する料金変動もありません。
最新の時刻表と料金についてはZFBH公式ページを参考にしてください。
3. チケット購入方法
ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦鉄道ではまだ自動券売機の導入が行われておらず、全ての乗車券は有人窓口で購入することになります。
こちらはサラエボ駅のチケット窓口。ここで行き先と片道か往復かを伝えてください。
窓口にクレジットカード対応のステッカーが貼ってありますが、実際には現金のみとなっているようです。
チケットは今では珍しい手書きによる発券。この紙に人数や片道か往復かの種別、行き先などが書かれています。
プラットフォーム番号はこのチケットには書かれていないので、前述の駅の張り紙を参照するか、窓口スタッフに「Peron?(英語でPlatformの意味)」と聞いてみてください。
ボスニア・ヘルツェゴヴィナ連邦鉄道ではモスタルやサラエボなど大きなターミナル駅を利用する場合に限りオンラインでの乗車券購入に対応しました。
支払いはVISAもしくはマスターカードに対応。ただし、購入後も発車10分前に現地カウンターにて引き換えを行う必要があるので注意してください。
4. 使用列車一例
ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦鉄道ではほとんどの旅客列車に客車列車を使用しています。
たとえ客車1両の短い編成でも機関車牽引式。一方、ユーゴスラビア時代に鉄道網がかなりしっかり整備されていることもあり、全て区間全域が電化されています。
客車の多くは6人用コンパートメント方式。満席になることはまずないので、比較的広くスペースを使うことができます。
一方、サラエボーモスタル間は人気路線ということもあり比較的新しい客車の導入も進んでおり、そちらは2列シートタイプの座席も設置されています。
5. 乗車方法
ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦鉄道を利用する際には、まず事前に窓口で乗車券を購入する必要があります。
その後、プラットフォームを確認し、発車の20分ほど前になったら予定されているプラットフォームへと上がっていきましょう。
日本のような事前改札はありません。
同じプラットフォームにも複数鉄道が止まっていることがあるため、乗車時に駅係員もしくは車掌に行き先を確認し、乗り込むことをお勧めします。
検札は列車発車後に車掌がそれぞれの座席を回って行われます。
6. 注意点
ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦鉄道を利用する上での注意事項を最後にいくつかシェアしておきます。
もともと旧ユーゴスラビア時代には大変発達した鉄道網を持っていたものの、その後のボスニア紛争によってハード面でもソフト面でも大きなダメージを負い、現在ではヨーロッパでもかなり弱い鉄道インフラを持つ国になってしまいました。
そのため、鉄道の定時運行が行われることはまずなく、基本は始発駅のみ定時発車。その後は遅れを積み重ねていくことになります。
例としてサラエボーモスタル間だと公式時刻表では2時間程度の所要時間になっていますが、平均して3−4時間程度の所要時間がかかっています。
また、それに伴い、途中駅から乗車する場合には予定時刻になっても列車が来ないということは日常茶飯事。発車時刻が過ぎても列車が来ない、と思っても慌てずプラットフォーム前で待っていてください。
どんな小さな駅でも必ず各駅には駅員がおり、列車到着前にはプラットフォームに出てくるので、そういった係員に聞いてみてもいいと思います。
基本英語は通じないものと考え、極めて簡単な単語やシンプルに目的地だけ言う、紙に書く、Googl翻訳を使うなど、コミュニケーションの手段は工夫する必要があります。
一方、敷線はさすが繁栄を極めたユーゴスラビアを思わせるような見事なもの。
非常に山深いエリアに見事な石造りの橋が数多く作られていたり険しい山々にトンネルが数多く掘られたりと、道中の車窓はかなり楽しむことができます。
あまり時間のことは気にせず、のんびりと鉄道旅行を楽しんでみてください。
7. 最後に
いかがでしたか?
今回はボスニア・ヘルツェゴビナ連邦鉄道の利用方法を紹介しました。
時刻表通りにいかない、英語が通じないなどの不便や問題点はありますが、その車窓はとても美しく、多くの旅行者がサラエボーモスタル間を鉄道で移動する理由がよくわかります。
チケット購入など他国と勝手が随分と違うので慣れないと難しく感じてしまうこともあるかと思いますが、窓口スタッフもとても親切でなんとか必死にコミュニケーションをとってくれようとするので安心。
是非、ボスニア・ヘルツェゴビナを旅行する際の移動手段の一つとして鉄道利用もしてみてください。
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部屋は言うまでもなく非常に綺麗で広々、しかも値段もかなり抑えめと厳しめにみても文句なし。
次サラエボに行くときは必ず戻ってくる、と宣言したくらい一押しの宿泊施設です。
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