オーロラ観測したことのある人、もしくはこれからしてみたいと考えている人、多かれ少なかれ前知識をお持ちだと思います。
しかしながら実は、実際に巷で言われているオーロラにまつわる噂や話は結構事実ではなかったり迷信まがいのものがたくさんあります。
今回は、実際に北欧諸国の北極圏を中心にオーロラ写真を5千枚程撮影してきた私が、その噂を切り捨て真実をお教えします。
1. 肉眼では赤は見えない
よく撮れたオーロラ写真を見ると、オーロラの色は緑だけではなく赤やオレンジなどカラフル。でも、緑以外の色は肉眼では見えないよ!ということを聞いたことはありませんか?
実はこれ。大嘘です。
肉眼でもはっきり赤、オレンジ、黄色などの色は見えます。確かに写真では彩度の調整をしたりしているので、肉眼であそこまでくっきりとはいきませんが、それでも明らかに赤、オレンジといった色をはっきりと認識できます。
何色に見えるかはその時のオーロラの強さ、そして観測する位置や方角など様々なことが影響してきます。
2. 薄雲みたいな感じに見える
これは半分正解、半分大嘘です。太陽活動が非常に低く観測に適していないような状況の際や、オーロラがしっかりと発生する前後の予兆の際には、うっすらと白い雲のような形で肉眼で見えます。
この場合は、写真を撮ることでのみ(写真のセンサー上で)緑だと認識ができます。
実際のところ、オーロラを見には行ったけどうっすらと、雲みたいなものしか見えず帰国せざるを得なかった人が「オーロラは白い雲みたいな感じ」と口を揃えて言うため、そういうもんだと広まってしまったようです。
実際に活動が高まると空が明るくなるくらいかなり強い光を発するオーロラを肉眼で見ることができます。そのような際には宇宙から降り注ぐオーロラの筋や、秒単位で形が変わるオーロラのダンスのような姿を見ることができます。
3. iPhoneでは撮れない
iPhoneなどスマホのカメラでは撮れない、という声も聞こえますが、実際はそれも嘘です。この写真はiPhone7のカメラで撮影したもの、はっきりとオーロラが写っています。
特に近年のスマホカメラの進化は著しく、ある程度強いオーロラが出現した場合には、手持ちで気軽にそこそこの写真を撮影することができてしまいます。
ただし、高感度設定によるノイズの発生や手ブレなどは現状まだつきまとう問題で、しっかりとしたカメラと比較すればやはり大きな差があるというのも事実。オーロラの本格的な撮影ということを考えるのであれば三脚に固定でき撮影条件をマニュアル設定できるカメラが必要です。
4. 極寒の僻地に行かないとダメ
これも半分嘘、半分本当です。オーロラというとマイナス20~40度の山に囲まれた僻地で耐久戦をするという印象を持っている人が多いのではないでしょうか。
確かにオーロラバンドの近くに行かなければならないということで、ある程度大都市からは離れた場所に行く必要があります。しかし、場所を選べば結構利便性のいいところで観測ができたりします。
一番いい例はアイスランド。首都レイキャビクからもオーロラが見えますし、少し中心部を離れれば光害も抑えられてなかなか綺麗なオーロラを見ることができます。暖流の影響で意外かもしれませんが真冬でも気温は-3度程度。
ノルウェーのトロムソもいい例の1つ。北極圏にあるにもかかわらず暖流の影響で気温はどんなに寒くても-10度程度。オーロラ観測に最適な3月では、気温も+5度程度まで上がりしかも晴天率も高く観測条件としては最高です。こちらも街中からオーロラを見ることができます。
5. 月があると見れない
これは大嘘です。月があって見えないのは、前述した薄雲みたいなぼんやりしたオーロラ。ですが皆さんが見たいオーロラはそんなものじゃないはずです。
肉眼で色を認識できるレベルのオーロラであれば、月明かりがあろうとなかろうとしっかりと見えます。
ちなみに、ノルウェーで出会ったプロのカメラマンによると、月明かりはむしろ写真を撮る上では必須なんだとか。月明かりがることで大地が照らされて写真がより綺麗になるとのこと。新月の時は暗すぎて絵にならないと言っていました。
言い換えると、ただ肉眼で見るだけであれば真っ暗闇の方がいいのかもしれませんが、写真を撮るとなると月明かりは結構大事だったりします。
一点注意すべきことは、写真を撮る際にフレーム内に月が入ってしまう際の撮影(写真左)。月明かりによってカメラの露出オーバーになったり、ハレーションなどが入り込んだりとちょっとイマイチな出来栄えになってしまう可能性があるので構図には気をつけて下さい。
6. 街明かりがあると見えない
これも大嘘です。もちろんニューヨークやロンドンのような大都市のネオン街ではオーロラは見えないかもしれませんが、そもそもそんな場所にはオーロラは発生しません。
オーロラが出るような地域であれば、街中でもはっきりとオーロラを見ることができますし、街明かりにはそこまで気にしなくても大丈夫。
この写真のように光害が大きい都市の上部でさえ、ある程度の強さのオーロラが発生すればしっかりと確認することができます。
ツアーに参加することなく完全な暗闇に自力で行くことはなかなか難しいですし、徒歩での移動の場合には危険も伴いますのでお勧めできません。
7. ツアーに参加すれば見れる
確かにツアーに参加することで、雲の切れ間を狙って車を走らせてくれたりするので見れる可能性は高いかもしれません。ですが、一方でツアーの場合には他のツアー客との気持ちのギャップが問題になってきます。
写真を撮りたいのであればおすすめはできません。ツアー参加者のほとんどはカメラも持たない人たち。カメラを横切る、三脚に足を引っ掛ける、突然スマホライトをつけてセルフィーにフラッシュ撮影、バスに出入りするたびに車のライトがついたり、、、
とにかく全然落ち着きません。
あえて高いお金を払ってツアーにいかなくても、天気さえ良ければ自分の歩ける範囲で少し街の中心部を離れれば十分に綺麗な写真を撮ることができるはずです。
8. Kp低いと見られない
オーロラ観測の知識が少しある方にはおなじみのKp指数。簡単に言うと太陽活動に関わる地磁気擾乱の大きさを示す指数で、この数値が高いと強いオーロラが見れる可能性が高いと言えます。
こちらの記事でKp指数を用いたオーロラ予報アプリを紹介していますので参考にしてください。
通常の状態はKp +2程度、活動が高まると+5や+6になりかなりのオーロラが期待できる、と一般的に言われます。ただこの説のせいで「Kp+2だと弱くてオーロラ日和じゃない」とがっかりする人が非常に多い。
ですが、Kp+2でもかなり強いオーロラは出ます。出る頻度が少し少ない、もしくはオーロラ爆発の間隔が長いという具合で、実際のところKp+2でもかなり満足のいく観測ができるはずです。
こちらのタイムラプスは私がスウェーデンのキルナとアビスコで撮影したもの。撮影時はキルナに4日滞在しましたが、全日にわたってKp+2でした。
空が赤と緑に染まった人生で最大とも言えるオーロラ爆発をみたのもKp+2の日でした。
Kp指数が低くても、天気さえ良ければ夜の9〜11時頃粘ってれば必ずといっていいほど2〜3回のオーロラ爆発は見られるというのが私の経験則です。
9. 時期は冬限定
オーロラは冬のもの、というイメージがありますが、実はオーロラ自体は1年中発生しています。ただ夏場はオーロラ観測のメインとなる北極圏に近い場所では白夜になったりあるいは日中の時間が長すぎるために観測に向かない、というだけです。
ですので、最近では4月の春のオーロラや9月〜11月の秋のオーロラが非常に注目されています。この時期は気温も高く、また天候も安定しやすいことから冬場のオーロラよりも観測率が高くしかも気楽に観ることができます。
ノルウェー人プロ写真家によると、9月〜10月がオーロラ撮影のベストシーズンとのこと。意外かもしれませんが夏が終わった直後の方が観測率も高く、いい写真がとれるんだとか。
10. 運次第
オーロラは運次第だから、と言っている人を見ると、未だにそんなこといってるの?と言いたくなります。
現在では前述したオーロラ予報アプリなどを使うことで10分単位で太陽活動の変化を調べることができます。また天気予報もかなり発達しており、地域ごとのリアルタイムの上空の雲の状況や動きを知ることができます。
これらを組み合わせることで、いつどこにいけばオーロラが見られるのかをしっかりと計算して確実な観測が可能になります。
実際多くのオーロラ観測ツアーはこれらを使用して、ツアー客を最適なポイントに連れて行きます。ですがツアーでなくてもアプリやウェブサイト等を使えば個人でも可能になるのです。
闇雲に寒い中いつまでも待つ、ということは今はする必要がありません。
最後に
いかがでしたか?
オーロラというと、なかなか観測が難しくわざわざ海外にまで足を伸ばしても無駄足に終わるかも、、、と思っている多くの方がいると思います。
私自身、オーロラを見るためにアイスランドやスヴァーバル諸島(北極点に一番近い有人の島)、ノルウェーやスウェーデンのラップランド地方など様々なところに行きました。
ここで私は、オーロラは「天気さえ良ければ必ずオーロラは見れます」と高らかに宣言したいと思います。今までオーロラ観測にいって天気がいいのに発生しなかったということは1度もありません。雲さえなければかならず見れる、そう信じています。
一度上空でゆらゆらと緑や赤の光が揺れる光景を見ると、一生忘れない思い出になること間違いなし。是非オーロラハントの旅に出かけてみてください。
>オーロラは運次第だから、と言っている人を見ると、未だにそんなこといってるの?と言いたくなります。
>天気さえ良ければ必ずオーロラは見れます
現地にお住まいの方や、お金と時間があって長期滞在出来る方はさておき、ほとんどの人は旅程を事前に決め、しかも限られた時間での滞在になるので、その期間が晴れるか曇るか雨雪が降るかは、やはり運なのではないでしょうか?
桜満開の時期に日本に来たにも関らず、来日1~2日前の雨でほぼ散っていたという不憫な知人を思い出しましたので(自然には勝てないのでまた来いよとしか…)。
アイスランドは私も是非行ってみたい土地です。今年こそはと思いつつ未だに行けていないので、記事を読みながら憧れだけがつのっています。
確かにランダムで渡航して1、2日しかないとなると運という要素も多いかもしれません。
ただオーロラの出現目安になる太陽活動は1ヶ月以上、サイトによっては3ヶ月近く前から予報されているのである程度可能性を高めることはできます。また、北欧はどこも天気が気まぐれなので、リアルタイムの雲の情報なんかを頼りに移動できる環境があれば(ツアーやレンタカーなど)、オーロラ観測率を著しくあげることができるのも事実です。
そういう意味でオーロラはその時次第というわけではなくかなりデータに基づいて観測ができるもの、ということで運ではないという言葉を使っています。
アイスランドは最低1週間、車を借りて各地を好きにドライブできれば世界中どこよりも思い出深い旅になること間違いありません。
>オーロラは運次第だから、と言っている人を見ると、未だにそんなこといってるの?と言いたくなります。
同感です。オーロラを観るためには、諦めない心と事前調査が一番です。
北欧の観賞地では、天候が変わり易いので、晴れ間を探せば、オーロラに出逢うチャンス
は大きいです。
私の経験では、2013年3月トロムソに滞在した時、朝から大雪が降っていた日がありました。
17時になってツアー会社からキャンセルしてもいいと連絡があったが、諦めずに参加したら、
19時から雪が晴れて、満天星の下で美しいオーロラダンスと出会いました。
また、その滞在時間中にハンティングツアーに参加して、1時間30分移動して、バスから降
りて間もなく頭上でコロナーブレークアップが出現しました。
場所は変わりますが、このリンク先のタイムラップスは2018年9月10日イエローナイフで撮
影したオーロラです。
https://www.youtube.com/watch?v=bHNPoJwdEOI
この日も現地ガイドが雨やみぞれの中、2時間車を走った結果、24時過ぎに出逢ったブレー
クアップです。
聞いたところによると、当日ほとんどのオーロラツアーは24時前に終了したため、この素晴
らしいシーンを堪能できたのは私が参加したツアーの10人のお客さん+ガイドのみというこ
とです。
今まで私は累計151日オーロラ観賞に出かけて、うち、出逢った各レベルの日数は下の通
りになります。
* 観られなかった日数 : 38日 (25.2%)
* レベル3未満の日数 : 24日 (15.9%)
* レベル3-4 の日数 : 34日 (22.5%)
* レベル4以上の日数 : 55日 (36.4%)
個人的には、「天気さえ良ければ必ずオーロラは見れます」のではなく、
「天気が悪くても、根性と事前調査があれば、8割の確率でオーロラが観られます。」
と思っています。
また、オーロラ予報サイトの3ヶ月予報はあまり気にする必要はないです。なぜなら、
2017年9月上旬のように、太陽活動が突然活発化して、10数年ぶりのオーロラが出現
したりするからです。
現時点で1番のお役たちのアプリは Aurora Now です。なにしろ、2017年2月に参加
したツアーでは、素人添乗員でもちゃんとオーロラが出る場所を探せましたから。
昨年秋にアイスランドを初めて訪れて以来、今後、海外旅行はアイスランドしか行きたくない!と思うほどアイスランドの大地にハマりました。でもアイスランドに関する記事が少なくて>< こちらのサイトにやっとたどり着いて小躍りしそうです。来年夏にもまた行くことにしたので、しっかり記事を読ませていただき参考にしますね。夏のアイスランド記事もぜひお願いします^^
アイスランドはホントいいですよねー。
実はアイスランドには複数回いっており、(降りしきる雪の中誰もいない一本道事故を起こしながら)車で一周もしたりしたんですがなんせその写真枚数とデータが多すぎて全く追いついていません。
今年中、もしくは来年にはレイキャビク以外の穴場についての記事も書いていきたいと思っているので、長い目で見守ってやってください。