日本人には馴染みがない陸路での越境。
空港での入出国審査は何度やってもどうもいつも緊張してしまう、という人が多いと思いますが、未知の陸路となればなおさらのこと。
今回はバルカン半島(旧ユーゴスラビア諸国)を陸路で周遊する旅行者向けに、観光客がよく使う国境検問所での大まかな流れと混雑情報をまとめてみました。
1. クロアチアースロベニア国境(リュブリャナーザグレブ)
1-1. 一般情報
クロアチア、スロベニア共にEU加盟国ではありますが、EU間の国境移動の自由を定めたシェンゲン協定にクロアチアは現在未加盟です。
そのため、両国間の国境を通過する際にはパスポートによる入出国審査があります。
最も観光客が利用する国境で、リュブリャナーザグレブ間を移動する際に通ることになる国境がオブレジェ Obrežjeにある国境。
高速道路上にあり、非常に大きな料金所のような設備です。
オブレジェでの国境は両国とも入出国時に全員バスから降車し、パスポートを持った状態で一人一人係員の窓口を通過する必要があります。
日本人の場合、両国とも観光での短期滞在の場合ビザは不要で、入国時質問攻めにあうことはないと思いますが、滞在期間など最低限のことは答えられるように準備しておきましょう。
1-2. スタンプ情報
スロベニアはシェンゲン協定加盟国であるとともにシェンゲン協定加盟国の玄関口、それに対しクロアチアは未加盟ということで入出国時の審査の厳しさに大きな差があります。
特にクロアチアの出国審査は、パスポートと本人の顔が一致しているかの身元照会程度で、ほとんどの場合出国スタンプが押されることもありません。
これが後々問題になることは特に無いので、スタンプがなくても驚かないようにしてください。
スロベニア入出国時、クロアチア入国時はパスポートに押印されます。
クロアチア入国時 スタンプ有り
クロアチア出国時 スタンプ無し(原則)
スロベニア入国時 スタンプ有り
スロベニア出国時 スタンプ有り
1−3. 混雑情報
スロベニアの国境はEU加盟国の中でも特にシェンゲン協定加盟国の玄関口ということもあり、近年入国審査が厳格化しています。
特に、オブレジェの国境はクロアチアの首都ザグレブからスロベニアの首都リュブリャナを結ぶ国境ということで、その傾向は強く、また交通量も非常に多いエリアのため慢性的な国境渋滞が発生しています。
特に、夏場や週末は場合によっては国境通過だけで2時間~3時間程度かかることもあり、旧ユーゴスラビア諸国間の国境の中では最も忙しい国境とも言われています。
そのため、観光などで利用する際は極力週末を避け、また夏のホリデーシーズンなどは最悪の場合を想定し、バスの運行予定よりさらに3時間程度は時間にゆとりをもった移動の計画を立てることをお勧めします。
2. クロアチアーボスニア・ヘルツェゴビナ国境(ドブロブニクーモスタル)
2-1. 一般情報
クロアチアで最も有名なアドリア海の沿岸リゾートであるドブロブニクと、ボスニア・ヘルツェゴビナ最大の観光地モスタルの国境はイヴァニカ(Ivanica)という場所にある国境を通ることになります。
このイヴァニカの国境は旧ユーゴスラビアの中でも有数の悪評高い国境として知られ、夏場は観光客や地元の人で大変混雑するにも関わらずゲート数が1−2個しかなく、バスも乗用車も同じレーンだったりと通過に非常に時間がかかることが知られています。
ボスニア・ヘルツェゴビナ入出国時はパスポートはバスの車内で回収され本人はバスの中で待機するだけで済みますが、クロアチア入出国時は全員降車して窓口で審査を受けることになります。
両国間の移動は日本人観光客であればビザなしで行うことができます。
2-2. スタンプ情報
ボスニア・ヘルツェゴビナ入出国時の審査はパスポートだけ回収され、偽造かどうかのチェック程度しか行われません。
そのためパスポート所持者と審査官との対面はなく、入国が認められた場合にはパスポートに入国印だけ押され返却されます。
ボスニア・ヘルツェゴビナ出国時のスタンプは押されないことが多いですが、担当官によっては押してくれることもあるようです。
クロアチア入国時 スタンプ有り
クロアチア出国時 スタンプ無し(原則)
ボスニア・ヘルツェゴビナ入国時 スタンプ有り
ボスニア・ヘルツェゴビナ出国時 スタンプ有り
2-3. 混雑情報
イヴァニカの国境は前述の通りホリデー期間中は最も酷いレベルで混雑することが知られている国境。
夏の間は平日でも1時間待ちは当たり前、週末になると、最低でも3時間程度は見ておく必要があります。
ですので、バスの予定到着時刻はあてにせず、上記の時間を加味して到着時間を算出してください。
極力この国境を避けること、そしてやむを得ない場合には平日に通過するようなスケジューリングが大切です。
3. クロアチアーボスニア・ヘルツェゴビナ国境(スプリトードブロブニク)
3-1. 一般情報
ドブロブニクはクロアチアの飛び地になっているため、同じくクロアチアの有名リゾート地スプリトとドブロブニク間を移動する際はネウムにある Neum ボスニア・ヘルツェゴビナの国境を超え、再度クロアチアに入国する必要があります。
現在、このエリアには新道路が建設され、それに伴い国境審査の簡便化が行われたため従来よりも通過時間は短縮されていますが、やはりホリデーシーズンは混雑が伴います。
入出国審査はバスの中で行われ、両国の審査とも乗客は降車する必要はありません。
日本人観光客の場合両国間の移動にビザは必要ありません。
2-2. スタンプ情報
この区間の入出国審査は簡便化されており、バスの中に審査官が乗り込んできての身分確認程度になるため、両地域を移動するバス乗客の場合原則スタンプが押されないことが多いようです。
ただしこの手続きは流動的のようで、最近この国境をバスで超えた人の中には再入国時のスタンプを押されたという報告もあります。
クロアチア再入国時 スタンプ無し(原則)
クロアチア出国時 スタンプ無し(原則)
ボスニア・ヘルツェゴビナ入国時 スタンプ無し(原則)
ボスニア・ヘルツェゴビナ出国時 スタンプ無し(原則)
3-3. 混雑情報
この区間の国境は現在高速道路整備と共に新しい比較的大きな国境検問所が整備されました。
それに伴い、国境通過時間は従来よりも大幅に短縮されています。
サマーホリデーシーズンはそれでも多少の余裕を見る必要はありますが、何時間も大幅に国境で足止めされるということは稀です。
4. クロアチアーモンテネグロ国境(ドブロブニクーコトル)
4-1. 一般情報
クロアチアのドブロブニクとモンテネグロのリゾート地であるコトル間を移動する際にはカラソヴィチ Karasovićiの国境を通過することになります。
クロアチア入国審査は若干混雑が伴いますが、クロアチア出国、モンテネグロ入出国は比較的スムーズに通過することができる国境です。
両国間の移動において日本人観光客は事前のビザ取得の必要はありません。
4-2. スタンプ情報
モンテネグロの国境ではその時によって審査官がバス車内に乗り込み一人一人顔写真の確認をした上で入出国印を押す場合と、全員分回収し入出国印を押した上でまとめて返却する場合、そして全員降車して審査を受ける場合があります。
いずれにせよ何か質問されたりするようなことはなく非常に簡単な審査となりますが、その時によって対応が違うというのばどういう事情なのかはわかりません。
クロアチア側は入出国時とも乗客は降車し、窓口で簡単な審査を受けることになります。
クロアチア入国時 スタンプ有り
クロアチア出国時 スタンプ無し(原則)
モンテネグロ入国時 スタンプ有り
モンテネグロ出国時 スタンプ無し(原則)
4-3. 混雑情報
カラソヴィチの国境はクロアチア側、モンテネグロ側とも非常に小さな国境検問所ですが、モンテネグロ側の入出国審査はかなり簡便なようで、それほど大きな渋滞は通年発生しないようです。
一方、クロアチア側に入国する際は入国審査に時間がかかり、またバスレーン専用レーンへの分岐が検問所の間近にあることもあって、一般乗用車の混雑に巻き込まれるとさらに長い時間がかかります。
ハイシーズンにコトルからドブロブニクへと国境を通過する場合には1−2時間程度長めの時間を見ておくといいでしょう。
5. ボスニア・ヘルツェゴビナーモンテネグロ国境(モスタルーコトル)
5-1. 一般情報
ボスニア・ヘルツェゴビナの観光名所モスタルとモンテネグロのリゾート地であるコトル間を移動する場合にはクロブック Klobukの国境を通過します。
この国境は片側1車線道路となっているにも関わらず、ハイシーズンを除いてはほとんど渋滞は発生しておらず大変スムーズな国境として知られています。
一方、サマーホリデーなど夏季の短い期間においては、観光客が多く訪れる国境であるのも事実で、その場合は国境渋滞が度々発生します。
両国の入出国ともパスポートは車内で回収され、国境通過後に返却されます。バスの乗客は降車する必要はありません。
両国とも日本人観光客の場合はビザが不要です。
5-2. スタンプ情報
原則入国時には入国印が押されますが、出国時のスタンプはその時の担当官によって異なるようです。
ボスニア・ヘルツェゴビナ入国時 スタンプ有り
ボスニア・ヘルツェゴビナ出国時 スタンプ有り
モンテネグロ入国時 スタンプ有り
モンテネグロ出国時 スタンプ無し(原則)
5-3. 混雑情報
両国とも入出国審査がさほど厳しくなく、スムーズに行われるため夏のハイシーズンでも1時間程度で通過できることが多いようです。
週末は比較的混雑する傾向があるようなので、国境通過は平日がおすすめです。
6. 国境通過のまとめ
色々と長いこと書きましたが、全てを一般論としてまとめてみます。
シェンゲン協定加盟国のスロベニアを除いて旧ユーゴスラビアの国境審査はかなり流動的。特に入出国印(特に出国印)を押すかどうかについてはその場の担当官次第ということが多いようです。
入国印については、出国時や免税手続きの際などに問題になる可能性があるので必ず押印があることを確認する必要がありますが、出国印についてはなくても特に心配はいらないでしょう。
国境渋滞は慢性的に発生しており、バスを使って越境する場合にはバスの予定到着時間よりさらに1−4時間程度長めに見積もる必要があります。
特に夏季の週末は非常に混雑するので、国境移動は平日にし、週末の移動は極力避けることがポイントです。
基本的に日本人であればパスポートさえ持っていれば問題なく越境することができるので、特段心配はいりません。
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