各国それぞれが独自の食文化と伝統を持ち、時には「まじっすか」というものがあるのが世の常。
日本でも腐った豆(納豆)やら、緑の涙腺崩壊ペースト(ワサビ)、ゴ○ブリ風甘煮(イナゴの佃煮)とか色々やばいものがあるので、人のことは言えません。
基本的に好き嫌いはなく大概のゲテものも大丈夫な私ですが、アイスランド旅行中に初めて「これ以上食べたら死ぬかも」とノックアウトされた食材に巡り会いました。
今回は、偶然経験することになった冬の定番アイスランド伝統料理、毒ガスよりも臭いシーフード料理を紹介します。
1. 海の幸が豊富なアイスランド
アイスランドは国土を360度海が囲む島国、伝統的に魚をメインに食べる国民のため、日本同様魚文化が定着しています。
また、ヨーロッパでは珍しく捕鯨国でも知られ、現在でもクジラ肉はかなり広く食されているというのも特徴。
せっかくなのでクジラステーキを頂きましたが、ちょっとした高級レストランでいただく美味しい牛フィレステーキをも凌ぐかなりの美味でした。ヨーロッパ在住中に食べた食事としてはNo.1クラス。
そんなレイキャビクの市内には大きな漁港があったり、魚市場やシーフードレストランが軒を重ねていたりと、魚好きにはなかなかたまらない国。
言うまでもなく、恐らくヨーロッパでも1、2を争うシーフード大国です。
そんな中、漁港のすぐ近くになかなかローカル色が出ているシーフードレストランを発見。
しかも物価が尋常じゃないほど高いこのアイスランドで、ビッフェ形式で好きなだけ食べられるということあって吸い込まれるように入店しました。
2. 穴場シーフードレストラン
漁港すぐ近くにシーフードレストランを発見。
お腹も空いていたこともあり、店構えに惹かれて入店即決しました。
観光客はいませんでしたが、地元のおじさんたちが昼から飲んでいるようなそんなローカルな店です。
壁にはたくさんの魚の絵や魚拓が。普段タラかサーモンしか食べれない国にいることもあって気持ちが高ぶります。
うまそう、、、
メニューを見て、アラカルトもいろいろありましたが、ビッフェがイチオシだとのことなのでそれを頂くことに。
3. 感動の魚料理
スターター
とりあえずスターターとしてシーフードスープを出してくれました。非常にクリーミーで、魚介や蟹の風味が非常に効いたなんとも言えない濃厚なスープ。パンにも良くあう絶妙な味付けです。
日本人をシーフードで納得させるのはなかなかハードルが高いですが、それでもやはりそこはシーフード大国アイスランド。
期待を裏切ることはなく、メインの食事に胸が躍ります。
ここまでは順調。
ビッフェ品揃え
ビッフェはとにかく種類が豊富。そして当然のように、全て魚か野菜で、肉を使った料理は1品もありません。さすがのシーフードレストラン、徹底しています。
カルパッチョのような生の魚から始まり、煮込み、グラタン、フライに焼き魚と、ありとあらゆる魚の調理法全て網羅しています。シェフによると、この日は全部で12種類の魚を使っているとのこと。
また、過酷な環境のアイスランドというだけあって、伝統的な調理方法としては発酵させることが多いとのこと。その他酢漬け、塩漬けなど、アイスランドの伝統的な料理が並んでいました。
せっかくアイスランドにきたので、食べ過ぎリスクがありましたが少しずつ全種類制覇してみようと、少しずつお皿に盛りつけます。
順調な滑り出しの1皿目
さすがに1度では全て取りきれないので、ラウンド2に何品か残し1皿目の盛りつけ完了。
カルパッチョにフライに酢漬けに、、、
涙。
こういう料理を待ってました。ヨーロッパに移って約1年。
どんな小洒落たレストランに入っても、雑な魚料理をソースで誤魔化したみたいな、そんなシーフード料理に騙され続けましたが、ヨーロッパにも救世主がいました。
これからは魚食べにアイスランド行きます(意外と飛行機安いし)。
順調順調。
異変に気付いた2皿目
1皿目に感動し、胸躍らせながら2ndラウンドへ。今度はこってり系の魚料理を中心に盛りつけます。
なぜか1品だけ、アルミのカバーで常に蓋をされている魚の煮込みがありましたが、その時はなんの疑問も持たず。
ちょっとテクスチャーが変わってる?なんの魚だ?と疑問を持ちながらもとりあえず一欠片とって着席。
もちろん2皿目にとった魚料理もどれも絶品(皿の向こう側に控えてる”1匹”を除く・・・)。
ちょっと硫黄の匂いするなーと思いつつも、アイスランドでは蛇口を捻ってお湯を出せば、常に硫黄が香る温泉水なので、茹でた水の匂いかな?と気にせず。
そして、先ほどの未知の魚料理(向こう側に控えてる”1匹”)を口にした途端、異変に気づきます。。。
4. 悪夢の始まり
例の料理を一口。そこから何かが狂い始めます。
揮発性毒ガス窒息死。
人生で初めてです。食べたものが喉あたりで揮発性のガスを発しながら、アンモニアのプールの中で息継ぎしているようなスースー感。
わさびとは違う「ツーン」とした感覚が花を襲います。そして、口蓋が焼けるような感覚。そして後から襲ってくる超絶厳しい刺激臭。
とりあえず330ml800円もした瓶ビールで流し込んで、気持ちの整理をつけます。
2口目。
ファーストアタックで敏感になった鼻のせいで、さらに強い刺激が。大概のマズいものは耐えられますが、今回ばかりは身体が毒と認識して拒絶反応開始。マズいというより刺激臭で味を感じません。
これ腐ってんのか?
ちょっと困惑しながらも、もう1口トライし、ギブアップしました。
皿をテーブルの一番遠いところに追いやってもまだアンモニアが香る。完全に口の中が汚染され匂いが引かない。
次第に吐き気が襲います。
リアル涙目。
さらに自分も椅子を引き、怪しまれない程度にテーブルと距離を置くも、アンモニアの匂いが襲います。嗅覚が防衛本能を発揮するとはまさにこのこと。
写真見るだけであの時の臭いを思い出します。
クサいをはるかに通り越してアンモニアのツーンとした刺激臭、中学の理科実験で嗅いだあの匂いです。
寒すぎると寒さを感じずに痛くなる、まさにあの感じの匂い版。
食欲は完全消失し、吐き気を鎮めるので必死。
なぜあの料理にだけカバーがされていたのか、ここで初めて理解しました。
5. 腐ったエイ kæst skata
あの刺激臭を発する魚はなんだ!シェフを問い詰めます。
こんなところで食中毒にでもなったらたまりません。保険金請求しなければ。
シャフにこれは食えないっていう意思表示とともに、他の客へ犠牲が広がる前に伝えます。
「これ腐ってんじゃないのか?」
さすがのシェフも機嫌を害するかと思いきや、爆笑しながら
「You are right」
と。
えー簡単に認めないでよ。。。
話をよく聞いてみると、あれはKæst skata (fermented skate)というアイスランドの伝統料理で、ガンギエイを常温で腐らせた(良く言えば発酵)アイスランドの伝統料理とのこと。
腐る過程でアンモニアを発するようになり、さらに濃縮されることで超強烈な臭いを発するんだとか。
「It has been described as eating rotten fish(腐った魚と称される)」
しかもそのあまりに強烈な臭いから、人が住む地区では製造することができないためにアイスランドの人里離れたところで作られているとか。
12月23日に伝統的に食べられるそうなのですが、加工工場で作られた食材を最後の最後に家のキッチンで調理するだけで、そのあたり一帯がアンモニア臭に包まれるというかなりヤバイ食材だということがわかりました。
そんなものレストランに置かないでよ。。。
と思いましたが、一般的には通年を通して食べられるような食材ではなく、あくまでクリスマス前に広く食されるという季節物のよう。訪れた時期が悪かった。
ちなみにアイスランド人の中ではクリスマス時期のご馳走として人気とのこと(参考リンク)。実際確かに他のお客さんは結構お皿に取っていた形跡はあり。
いずれにせよ、旅行者が興味本位で食べるにはかなりの要注意食材。万が一これが1品物のプレートだったら確実に金をドブに捨てることになります。
毒マークつけとけよ!
非アイスランド人にとっては毒そのもの、その後半日食欲が一切湧かなかった、そんなアイスランドの伝統料理でした(失礼)。
6. 最後に
いかがでしたか?
散々書きましたが、旅行をする際には各地の食文化を経験すると言うのは楽しみの1つ。現地の伝統料理に触れるのはとても良い思い出になります。
今回はアイスランドで偶発的に、クリスマス前の伝統食である刺激臭のする腐ったエイをつかまされ、いい意味でも悪い意味でも一生忘れられない思い出になりました。
その後お腹を下したり救急車になったりはしていませんので、腐ってはいるものの加熱してあることもあり食材としては大丈夫みたい?
ちなみに、アイスランドには他にも鮫を発酵させたHákarlという、こちらも強烈な匂いを発する食品があり、こちらは酒のツマミとしてスーパー等に売られていたりします。
超勇気のある方、アイスランドに旅行の際には、アンモニアプールで泳いでみてはいかがでしょうか?私はもう2度と頂くことは無いと思いますが。。。
店名: Sjávarbarinn
住所: Grandagarður 9, 101 Reykjavik
営業時間
平日: 11a.m – 9p.m
日曜: 3p.m – 9p.m
ガンギエイの腐った料理ですが、韓国にも同じ食材の「フォンオ・フェ」(フォンオ=ガンギエイ、フェ=刺身)が有ります。
此方も強烈なアンモニア臭ですが、酸味の強いマッコリ(韓国のドブロク)を一緒に飲むと、口の中でアンモニアが中和されて食べ易くなります。 ワインでは、生臭くなるかも知れません。
アイスランドの方は、食酢かレモン汁(無ければ、酸味の強い柑橘類の絞り汁)を振り掛けてみたら、食べ易くなるのでは?
おそらくあれは地元の人は美味しいというので「acquired taste」なんだと思いますが、外国人的にはそこまで無理して食べたいとも思いません笑。