死ぬまでに一度は見たい絶景の一つとして度々紹介されるノルウェーの奇跡、トロルの舌 Trolltunga。
SNSでその絶景とフォトジェニックな地形が広まり、今では世界的に有名なハイキングスポットの一つになりました。
日本でもテレビなどで取り上げられ、知名度が急上昇のこの場所、多くのハイカーがいつか登ってみたいとうずうずしているに違いありません。
今回はそんなトロルの舌へのアクセス方法やハイキング・撮影のポイント、そして実際のトロルの舌ハイキングレビューを紹介します。
1. トロルの舌概要
トロルの舌はノルウェー現地では「トロールトゥンガ Trolltunga」と呼ばれる標高700m地点にある岩塊。
リンゲダールスヴァットネ Ringedalsvatnet と呼ばれる湖から突き出すような地形が、ノルウェーの神話として伝わる森の妖精トロルの舌に似ているとして名前がつけられました。
もともとは地元ノルウェーの人の中で知られている場所でしたが、2010年頃を境にSNSで世界中に広まり、今では年間10万人もの人が訪れるノルウェー有数の観光名所になっています。
トロルの舌へは往復約20−25km、約10時間〜12時間程度のハイキングを経ないとアクセスできないにも関わらず、その美しい景色と写真映えから人々を引き寄せています。
2. トロルの舌へのアクセス方法(ベルゲン発)
トロルの舌へはハイキング時間にして約10〜12時間、早朝にハイキングを開始する必要があります。
そのため最寄り町オッダ Odda に前泊するのが一般的となっています。
このオッダの街はトロルの舌ハイキングのベースキャンプ地であると同時に、ハダンゲルフィヨルド沿いのリゾート地。
もちろんスーパーマーケットやレストランなども数多くあるため、前泊するには最適な場所となっています。
日本から訪れる場合には、ノルウェー第2の規模の町であり旧市街が世界遺産に指定されているベルゲンを起点にし、オッダで前泊する1泊2日の行程を組むのがおすすめです。
ベルゲン〜オッダ
ベルゲンからオッダへは1日に2−3本、直通の路線バス(930系統)が運行しています。
ベルゲン中心地にあるバスステーションからオッダ中心地のバスステーションまで所要時間は約3時間。乗り換えもなく終点から終点までの移動となります。
オッダに夕方頃着くバスでベルゲンを発着し、トロルの舌へのハイキング前日に1泊するといいでしょう。
詳しいバスの時刻表はバス運行会社HPで出発地をBergen busstasjon、到着地をOdda busstasjonとして検索してください。
その他列車やフェリーを使用する方法もありますが、所要時間がさらに長く、また途中乗り換えを伴うこともあるためあまりおすすめはしません。
オッダ〜シェッゲダール(P2)
オッダの街から登山口のあるシェッゲダールまでは複数会社によってシャトルバスやシャトルタクシー(定額)が運行しています。
早朝からハイキングを開始できるよう時刻表が組まれているので時間の心配ありません。
シェッゲダールにはキオスクが1軒あるのみで、最低限のスナックや飲料、簡単なお土産をのぞいて買い物できる施設がないので注意してください。
シャトルサービスを使用せず、通常のタクシーを使う場合もシェッゲダールが下車場所となります。
シェッゲダール(P2)〜モーゲリトップ(P3)
トロルの舌へのハイキングはメイン駐車場のあるP2 シェッゲダールが開始地点。ここからまず最初の登り坂、標高差にして400mの舗装路を登ることになります。
しかし実際のところP2〜P3まで有料シャトルバスが運行しており、ハイキング時間の短縮や疲労の回避を目的にシャトルバスを使用する人もそれなりにいます。
このシャトルバスを使うと、距離にして約8km、標高差にして400m、時間にすると往復で3〜4時間の短縮となるため、ハイキングそのものを楽しみたい人や自分の足で登頂することが目的、という人以外であれば使用の検討をしてみてください。
往路のシャトルバスは予約制となっています。
3. レンタカー利用の場合のパーキング情報
レンタカーを利用して訪れる場合には、トロールトゥンガの公式駐車場 P1〜3のいずれかに駐車することになります。
駐車料金は有料でトロルの舌に近いほど高額となる料金設定。P1〜2は現地での支払い、P3は事前予約制となっています。
P3 Mågelitopp
もっともトロルの舌に近い場所にあるのがP3 Mågelitopp。実際にはトロルの舌へのハイキング道中にあるといってもいい駐車場です。
ここに駐車すると、トロルの舌ハイキングの最初の急な登り坂を歩く必要がなくなり、往復で3〜4時間の短縮となります。
ただし、駐車可能スペースは30台分しかなく、また完全予約制。
またP2からP3の道中は急勾配の一車線道路で、180度ヘアピンカーブが続くためそれなりに運転技術に自信がある人に限定、と公式に案内がされています。またエンジンブレーキのしっかり効く車を使用していない場合には避けたほうが無難かもしれません。
P2 Skjeggedal
トロルの舌のメイン駐車場といってもいいのがP2 シェッゲダール。約200台分の駐車場があります。
混雑する7〜8月にかけてはそれでも朝の8時前には満車になってしまうことも多いため、P2の利用を検討している場合にはなるべく朝早い時間に到着するようプランをたててください。
P2からトロルの舌までは28kmの道中となります。
P1 Tyssedal
P2が満車になった場合に駐車することになるのがP1 Tyssedal。220台分のスペースがあります。
P1からトロルの舌までは40kmと離れた場所にあるため、P1に駐車する場合にはP1〜P2間のシャトルバスを利用することになります。
4. 出発前に有用なウェブサイト・ハイキングTip
ノルウェーの天気予報
ノルウェーの天気は一般的にかなり変わりやすく、また国際的な天気予報はあまり当たりません。
ノルウェー現地の情報をもとに更新されている公式天気予報サイト、Yrを参照してください。
トロルの舌公式情報・シャトルバス予約
トロルの舌に行く前に必ずチェックしておきたいのがトロルの舌公式ホームページ。
ガイドを伴うハイキングツアーや天気などのリアルタイム情報、登山の注意事項、シャトルバスや駐車場情報など有用な情報が数多く紹介されています。
撮影のポイント(レンズ・カメラ)
トロルの舌のハイキングは10時間以上の長丁場。アップダウンも多いことから大きなカメラ機材を持っていくのはお勧めしません。
山頂部分で定番の写真を撮影するのにおすすめのレンズはフルサイズ換算35mmのレンズ。トロルの舌が湖部分に突き出している感じや、周辺の美しいフィヨルドの景色をフレームに収めることができます。
顔がしっかりとわかるくらいアップでも撮影したいとなると40〜45mm程度まで伸ばしてもいいかもしれません。
トップ画で使用している写真は富士フィルムのXマウント用に発売されている小型単焦点レンズ、XF23mm F2 R WR Bを使用しました。
以下レビューで紹介している写真全てこの単焦点レンズを使用して撮影しています。
フルサイズ換算35mmの単焦点レンズ、もしくは35mmをカバーする標準ズームレンズを持っていくといいでしょう。
道中雨が降ったり雪が降ったりということもあるのでカメラやレンズはなるべく防水に対応しているものがおすすめ。そうでない場合には濡れないようしっかりとパッキングしておくことが必要になります。
5. トロルの舌へ実際に行ってみた
というわけで実際にトロルの舌にハイキングをしてきました。
ハイキング日は7月の中旬、ノルウェーの夏真っ盛りの時期。日頃決してトレーニングしているわけでもなく、長距離のハイキングや登山もほとんどしないという初心者ハイカー、無事にたどり着くのでしょうか。
P2 シェッゲダールで一泊
ハイキングに際してオッダに宿泊するのが最もポピュラーだということを記事で紹介していますが、今回前泊先に選んだのはP2 シェッゲダールに位置し、ハイキングトレイル入り口の目の前に建つゲストハウス。
早朝6時半から登り始めるというスケジュールを立てていたため、このような選択になりました。
設備は最低限、レストランやスーパーなどは周囲になく、ゲストハウスでも電子レンジと湯沸かしポットしか使えないということがわかっていたため、カップ麺や調理済みの食材を用意し夜にチェックイン。
便利さや快適さという意味ではオッダ宿泊が絶対的におすすめですが、ハイキングの前泊という目的だけのためであればシェッゲダールでの宿泊も選択肢です。
P2〜P3をシャトルでスキップ
P2シェッゲダールからP3モーゲリトップは、すでにハイキング路の一部。ですが、この区間のみ専用の有料シャトルバス(要予約)を利用することができます。
この区間は非常に斜度のきつい登り坂(舗装路)になる部分で一気に標高4〜500mを登るため、開始直後にいきなりの地獄坂。
今回は体力消耗を最低限に抑えたかったこと、所要時間の短縮のためこのシャトルを使用しました。
周囲を見ているとこのシャトルを使わない人の方が圧倒的な多数派のようですが、このシャトルの存在を知らなかったという人が多いというのが実際のところかもしれません。
このシャトルを使うことで、往復距離にして7〜8km、時間にして3〜4時間の短縮が可能となります。結果としてシャトル利用は大正解でした。
最初の1kmは平坦路
シャトルバスを降りるとそこからは未舗装の登山道へと入っていきます。「トロールトゥンガ」の看板がその入り口を案内。
シャトルを降りて5分程度歩くと、残り10kmの看板が出てきます。もうあと10kmか、と余裕を感じさせるこの看板ですが、実際にそんなあまくはありませんでした。
道中、残り○kmの看板が立っているのですがこの間隔がとにかく長く感じます。
最初の1kmは比較的簡単なハイキング。平坦な道が続き、小川が流れていたり様々な木々や花々が咲いていて気分があがってくる風景。
まさにピクニック気分とはこのこと、と言えるほどに足取りもまだ軽やかです。
水のせせらぎを聴きながら少しずつ前へ。この時点で朝7時過ぎ。早朝に出発していることもあって他のハイカーも少なく、大自然を独占しながら先を目指しました。
怒涛の上り坂
しかし最初の1kmを終えたところで、このトロルの舌ハイキングが一般的に「Hard」と呼ばれる現実に突き当たります。
ここからはひたすら登り坂。もちろん未舗装で、不規則な石で階段が作られているだけ。
さらにその階段を乗り越えると今度は石の斜面をひたすら登り続けるという次の地獄坂に。ハイキング開始まだ1〜2時間とはいえ体力が一気に削がれていきました。
今回は天気に恵まれたこともあり、足場は乾燥していましたが、雨が降ったり雪が残っていたりすると難易度はさらに上がるのではないか、という印象。
坂を登れば登るほど景色も素晴らしくなってくるとは言え、急勾配をひたすら登るということもあり足取り軽く、とはいきません。
道中こまめに休憩をとり水分補給。この坂はツラいね、と足を止める現地ノルウェーの人もちらほら。
雪道ハイキング
怒涛の登り坂を終え、残り6km地点までくるとそこからしばしの平坦な道が続きます。
すでに標高は700〜800m地点に到達していることもあり、7月中旬とはいえ残雪がたくさん。かなり長い間雪道の上を歩くことになりました。
防水で滑り止めのしっかりついたハイキングブーツは必須、5〜6月はスノーブーツやクランポンのような装備が必要になることもあるようです。
トロルの舌への道は「T」のペンキで示されており、このマークを辿れば道を外れる心配はなし。
ただし、場所によってはマークがわかりづらかったり間隔が空いていたりしており、霧が出ていたり悪天候だと道をいつのまにか逸れてしまうということもありそうな感じ。
天候が難易度を大きく左右するのは事実だと思います。
1km近く続く雪道。朝はまだ気温も低く雪もしっかりしていましたが、帰りに通る時は雪解けも進み、ズボっと足がハマりそうになることもありました。
この雪道エリア後半になるとまだアップダウンが増えてきて、登っては降りての繰り返し。雪道ということもありペースが全く上がりません。
絶景ポイントを見ながらラストスパート
トロルの舌に近くと再度厳しい登りが待ち構えていました。ペースを上げることなく一歩一歩ゆっくりと進みます。
標高が上がれば上がるほど、ハイキングトレイル周辺のカスケードが増えてきて、汗ばむ体に涼を与えてくれます。これらの水はきれいな雪解け水で、もちろんそのまま飲むことが可能。
空のペットボトルに天然水を補給しました。
トロルの舌まであと3〜4kmの地点にくると、綺麗な氷河湖が見える絶景スポットが出現。
多くのハイカーが一旦足を止め、休憩したり軽食をとったりしていました。
ここから尾根の部分を歩いていけばトロルの舌へと到達します。
まさに絶景。トロルの舌までまだ道中続くとはいえ、この景色を見るためだけでも十分ハイキングをする価値はあると言えるほど。
トロルの舌への道中、見れる景色は次々に変わっていくため、長時間のハイキングと言えど景色に飽きることはありません。
トロルの舌まで登頂
最後の1kmになると、どんどんハイカーの数も増えてきて、またすれ違う人から「もう少しだよ!」と声をかけられたりしつつ気分も高まってきます。
はじめにシャトルを利用したとは言え片道5時間弱かけてついにトロルの舌へ到着。山頂部分では皆がランチや軽食をとったりと達成感で満ち溢れた雰囲気。
今回トロルの舌ハイキングにトライしたのは、実はCOVID-19による渡航制限が行われている時期。そんなこともあり、トロルの舌にきている人はほとんどがノルウェー在住者でした。
そんなこともあり、混雑する時期には写真を撮るだけでも3時間待ち、なんて言われるトロルの舌ですが、今回の写真待ち人数は多くても10人。待ち時間0で写真を撮ることもできる環境でした。
そのため何度も気がむくままに写真をとったり、ゆったりランチ休憩をとったりと快適な山頂での滞在。
そして何よりも景色が素晴らしく綺麗。
トロルの舌部分では暗黙のルールが出来上がっており、写真を撮る人以外は死角部分に隠れて列を作ります。
意外と横幅が広く、さらに先端部分にかけて若干上り勾配がついているためさほど恐怖心を煽らない地形。
そのため、結構勇気のあるポーズをとって撮影に挑む人も(無理は禁物です!)。
私もトップ画にあるような写真を撮ってもらいました。
本当に辛いのはここから
山頂に到着したのが正午前。写真撮影を楽しんだりランチを撮ったり、かれこれ1−2時間滞在したのち帰路へとつきます。
来た道をまた5時間かけて戻るこれがまさに本当の地獄。既に足には疲労が溜まり、トロルの舌へ行くという目的も達成した今、モチベーションを保つのは「早く帰りたい」というただ1つ。
しかし道中はまたアップダウンが続き、さらに急勾配の下坂や階段が弱った膝や腰をさらに痛めつけてきます。
復路も結局往路と同じくらいの時間をかけ、ゲストハウスに到着したのは午後5時近く。朝6時半に出発して約11時間のハイキングとなりました。
6. 最後に
一生に一度は登りたい世界の絶景スポット、トロルの舌。実際に行ってみて年間10万人もの人が訪れるというノルウェー一大観光名所になる理由がよくわかりました。
ただし道中はかなりハード。しっかりと準備し時間をかけて登る必要があります。だからこそ、トロルの舌の景色が特別に思えるのかもしれません。
非常に長いハイキングになるので、なるべく荷物を最低限にし、必要十分な食糧を持っていくのがポイント。また天気も変わりやすいので重ね着を基本にし、その時の体感温度に合わせて適宜調節していくのが成功には不可欠です。
足腰に自信がある方、是非トロルの舌ハイキングに行ってみてください。
ホテル名: Scandic Byparken
住所: Christies gate 5-7, 5015 Bergen, Norway
トロルの舌ハイキング前後にベルゲンに滞在するのにおすすめなホテルがスカンディック ビーパルケン Scandic Byparken。フィヨルド観光の始点であるベルゲン中央駅やバスステーション、市内にあるほとんど全ての観光名所に徒歩圏内と非常に便利な立地となっています。
ベルゲン市内その他のホテルと比べ宿泊料金が抑えられていている一方で、全宿泊者に無料で提供している超豪華な朝食ブッフェが売り。
もちろん北欧大手ホテルチェーン「スカンディック」の名を冠することだけあって、客室も綺麗でサービスも文句なし。実際の宿泊レビュー記事も書いているので詳しくはそちらを参照してください!
施設詳細・空室照会
エクスペディア: Scandic Byparken
Hotels.com: Scandic Byparken
広告についてお問合せしたいので、ご連絡いただければと存じます。