イタリアは長くつに例えられるほど細長い地形をしており、また山岳部も多くあるためイタリア国内の移動は鉄道が基本。
またそんな環境が功を奏し、車両製造なども盛んな鉄道大国だったりします。
今回はそんなイタリアで旧国鉄、トレニタリアを観光時に利用する際の使い方と注意事項を紹介します
1. トレニタリア列車種別

トレニタリアは日本でいうところのJRに相当する旧国鉄グループ。
新幹線に該当する優等特急列車から通常の特急列車、各駅停車まで幅広い列車を運行しており、初めて利用する際にはやや戸惑うかもしれません。
今回は簡単にトレニタリア列車種別を紹介します。
a. 優等特急フレッチャ〜シリーズ

日本の新幹線に該当する特急列車です。フレッチャシリーズには以下の三種類があります。
- フレッチャロッサ Frecciarossa
- フレッチャルジェントFrecciargento
- フレッチャビアンカ Frecciabianca
上のものから、のぞみ、ひかり、こだまに相当します。
フレッチャロッサは専用の高速架線を最高時速360kmで運行するため最も早く各都市を結び、また遅延が発生しにくいのが特徴。
フレッチャビアンカは在来線区間を高速車両を利用して運行するため、利用可能な路線網が広い一方、在来線の遅延の影響を受けやすいとも言えます。
フレッチャルジェントはフレッチャロッサとフレッチャビアンカの間をとったような列車で、高速列車専用架線と在来線区間を併用して運行しています。
運行区間を最も早く結ぶ列車である一方、運賃はトレニタリアの中で最も高く設定されています(フレッチャロッサ>フレッチャルジェント>フレッチャビアンカ)。
全席指定となっています。
b. 都市間特急インテルシティ

在来線区間を高速運行が可能な機関車によって運用されているインテルシティ InterCity。イタリア全土に幅広い路線網を持ち、前述のフレッチャシリーズの下位に相当する特急列車です。
停車駅はフレッチャシリーズよりも多く設定はされていますが、それでも区間によっては大差ない時間で結ぶため、最も乗車率が高くなっているのが特徴。
料金は各駅停車とフレッチャシリーズの中間程度の設定になっています。
こちらも全席指定です。
c. 各駅・快速列車レッジョナーレ

トレニタリアで各駅・快速列車として運行されているのが以下の2つ。
- レッジョナーレ・ヴェローチェ Regionale Veloce
- レッジョナーレ Regionale
主に近距離の移動に利用されます。
運賃は最も安く設定されており、また座席指定もありません。
2. トレニタリア切符購入方法
トレニタリアを利用する際の切符の購入方法を紹介します。
a. チケットの購入方法一般
チケットの購入方法は主に三種類、駅自動券売機を使う方法、有人窓口から購入する方法、そしてオンラインで事前購入する方法があります。
a-1. 駅自動券売機

駅構内やホームには自動券売機が設置されており、こちらで乗車券を購入するのが最も簡単で並ばない方法です。
多言語表記に対応しており、英語やフランス語、ドイツ語への切り替えが可能です(日本語には未対応)。
アルファベット表記で目的地を入力すると利用可能な列車一覧(特急含む)が表示されますので、その中から希望するものを選ぶだけ。
列車によってはさらに1等席と2等席を選べたりと、選択した車両によって画面が自動で切り替わっていきます。
操作は全てタッチパネルでおこなうことができ、とても簡単に扱うことができます。
支払いはクレジットカードのほか、紙幣や硬貨が利用可能(一部機械はカードのみ対応)です。
a-2. 駅有人窓口

英語で自動券売機を利用するのが不安な方や安全上の問題がある方(後述)は窓口の利用がおすすめです。
大きな駅の窓口はいつも長い列になっていることが多いので、乗車前に切符を購入する予定の際にはある程度時間に余裕を持っておきましょう。
窓口係員は英語を話さない人も多いため、目的地の駅名や希望する列車種別を書いたメモを用意していったほうがいいかもしれません。
a-3. オンライン

トレニタリアではオンラインでの事前乗車券購入にも対応しています。
トレニタリアの公式HP(日本語非対応)やレイルヨーロッパの公式HP(日本語対応)から購入可能です。
オンラインで購入した場合には駅で購入した場合と乗車前の手続きがやや異なり、乗車前の「チェックイン」と言われる事前改札を行う必要がありません。
購入時に使用したメールアドレス宛に送られてくる乗車券を印刷し、当日車内に持ち込むだけで乗車可能になります。
b. 列車種別の違いによる予約方法の違い
トレニタリアの列車は特急列車と各駅停車に大別することができます。大きな違いは、前者は全席指定席なのに対し後者は全席自由席であること、そして料金設定です。
b-1. 特急列車の場合

フレッチャ〜シリーズの優等列車やインターシティなどの特急列車は全席指定席なため事前の座席指定が必要です。
自動券売機、窓口で購入する場合にも乗車券購入方法に違いはなく、特に座席指定をしない限りはランダムに割り当てられますが、混雑などで座席が空いていない場合には乗車券を購入することができません。
また、複数人で同一車両に乗る場合にも、混雑度合いによっては必ずしも隣同士が確保できるとは限らない点も考慮しておいてください。
特急列車の乗車券は各駅停車と比べて高く設定されていますが、一方で事前購入割引制度があります。
残りの残席数に応じて料金が段階的に引き上げられていく制度が採用されているため、あらかじめ乗車日が決定している場合にはなるべく早くオンラインから事前購入しておくことがオススメです。
事前割引制度を利用すると当日購入する場合と比べて半額程度にまで安くなったり、2等席と同じ料金で1等席が選択できたりということが多くあります。
b-2. 各駅停車の場合

リッジョナーレなどの各駅停車を利用する際には事前割引はなく、オンラインで購入しても当日購入しても料金は変わりません。
また座席して制度もありません。
オンラインで購入した場合には乗車当日駅で乗車券を購入する手間を省けるといったメリットがありますが、一方で乗車可能な列車は「予約した列車およびその後4時間以内に発車する後続列車」に限定されますので注意してください。
3. 乗車前の改札方法
a. 駅での乗車券購入の場合

駅で購入する場合、このようにバーコード付きの航空券のような細長い乗車券が発券されます。
旅行者が忘れがちなのですが、この乗車券を受け取ったら駅構内もしくはホームに設置されている改札機に通す必要があります。

この機械の中央にある挿入口に乗車券の一端を挿入すると、挿入時刻が打刻されます。
この打刻を乗車前に行っておかないと車内検札で発覚した際に、不正乗車と見なされ別途正規料金を請求される可能性があるので注意してください。
b. オンラインでの乗車券購入の場合

オンラインで乗車券を購入した場合には、購入時に使用したメールアドレス宛に届く案内に従い乗車券(PDFファイル)を印刷します。
この印刷済みのチケットを持っていれば乗車時に駅での改札手続きは特に不要で、このまま列車に乗車することができます。
車内検札の際にこの印刷済み乗車券を車掌に提示してください。
4. 乗車券の見方

駅でチケットを購入した場合、全ての案内がイタリア語表記となるため、初めての人にはやや戸惑うかもしれません。
特に特急列車を利用する場合には、車両号数や座席番号が重要になってきます。
- TRENO: 列車番号
- CARROZZA: 指定車両号数
- POSTI: 座席番号
- CLASSE: 座席等級
ここで例に出している乗車券ではTRENO 608, CARROZZA 003, POSTI 62, CLASSE 02となっています。
この乗車券の意味は、608号ボローニャ行き、指定座席は3号車62番、2等席ということになります。
5. トレニタリアの遅延について

イタリアの鉄道は遅延する、ヨーロッパを旅行する人の中では常識のようにさえ思われていることですが、実際のところはというと、やはり遅延します。
とは言っても従来のように遅延して当たり前というようなほどではなく随分と改善はされて来ており、特に特急列車などは定時運行率も高くはなってきています。
しかし、依然として天候による遅延やストライキ、車両故障なども頻発しているのは事実ですので、ある程度時間に余裕をもったスケジューリングをおすすめします。
ここで紹介している写真は私が実際にボローニャで撮影したもの。この3日前に雪が降ったのですが、以前として掲示板に表示されている全ての列車が数十分単位で遅延(出発時刻横)という状況になっています。
30分以上遅延した場合にはやや手続きは面倒なものの一部払い戻しや振替切符制度などがありますので、遅延に遭遇した際には駅窓口を訪れてください。
6. トレニタリア利用時の安全面での注意事項
イタリアは世界有数の観光大国であると同時に、不法移民大国でもあり、残念なことに観光客を狙った犯罪がほとんどコントロールできていないほどに深刻になっています。
その中で最も代表的なのが駅や車内での犯罪・迷惑行為。特にロマ(ジプシー)やルーマニア、ブルガリア、北アフリカからの経済移民による観光客狙いの犯罪が頻発しています。
この項目では観光客が常に頭に入れておくべき注意事項を紹介していきます。
ポイントは大都市のターミナル駅では極力自動券売機を使わないこと、そして話しかけてくる人を決して信用しないこと。
特にローマやミラノ、ボローニャ、ベネツィアなど観光客にも人気な大都市では、イタリアの鉄道に不慣れな観光客を狙ったスリや物乞いが集まってきており、その酷さは控えめに言っても欧州で1,2を争う危険度です。
a. 戸惑ったら窓口を使う
とにかく不明点や券売機の操作が上手くいかないなどした時には、トレニタリア職員がいる有人窓口を使用しましょう。
主要駅ではわずかな隙を見つけてすぐにロマ(ジプシー)やチップ狙いのホームレス、スリ目的の不法移民が集まってくるので注意が必要です。
また鉄道とは関係ありませんが、空港行きのバス券売機などの周りにも多くのジプシーが陣取っており、券売機を利用しようとする人に極めて強引で不愉快な方法で介入してきます。
自動券売機を利用する際には周囲の状況を入念に確認してください。
b. 話しかけられたらすぐ立ち去る
イタリアの駅で親切はありえない、と思っていて損はありません。
助けてあげようか?切符の買い方おしえてあげようか?ホームの番号教えてあげるよ、と話しかけてくる人は100%チップを請求してくる物乞いやスリ狙いですので絶対に相手にしないように。
ハローやノーサンキューという声をかけるのも禁忌です。徹底して無視し、たとえ切符購入の途中であっても中止し即その場を離れることを考えてください。
こちらが軽く必要ないということを伝えた程度で向こうから離れるということはなく、その場にとどまっている以上より強引に介入してきます。
c. 困った時はこちらから話しかける
本当に困った時にはこちらから普通のイタリア人や鉄道会社職員に話しかけることが重要です。
話しかけられても相手にしない、困った時はこちらから、を頭にいれておいてください。
d. 女の子に注意
相手が子供だからといって油断はいけません。
特にロマ(ジプシー)によるスリなどの犯罪や物乞いの大部分は未成年者によるもの。一切教育を受けていないものが多く6−10歳程度の年齢でも犯罪に手を染めているものが非常に多くいます。
また、未成年者は逮捕されてもすぐに釈放されることもあり、身元不詳なジプシーという特殊性も相まって警察も対策を打とうとしません。
浅黒い肌、裸足、汚い服、英語で話しかけてくる、小学校高学年くらいの「女」の子が低学年くらいの子供を連れている、平日日中にも関わらず就学年齢の子供が少人数でいる、など該当するものが1つでもあれば要注意です。
2−5人程度の子供ジプシー集団が観光客を見つけてはスリを働くというのは、ヨーロッパ主要都市ではよく見かけますが、特にイタリアやフランスでの状況は酷いものがあるので旅行に慣れている人も十分に気をつけてください。
e. 鉄道職員や警察、軍の近くで待機
特に困りごとがなくても列車待ちの間などで待機しないといけない場合には、スリを避けるために大混雑している場所をさけ、人通りはあるものの隣の人とはある程度距離を取れる場所を探してください。
またテロ警戒のために多くの警察や軍が配備されているため、そういう人の目の入る範囲にいるというのも有効です。
ただし、ターミナル駅は利用客が多く、その分それを目当てにしたスリやホームレスも多くいるため警戒の対応が行き届いておらず、実際治安を脅かす事件が発生しない限りは警察や軍は動きません。
あくまでも自分の身は自分で守るという意識が大切です。
f. 偽警察に注意
観光客を見つけては警察だ、身分証を見せろなどといって、その間に仲間がスリを働くという犯罪も多発しています。
まずイタリア警察が観光客に身分証を見せろといったり話しかけてくることは余程の不審者出ない限り99%ありません。
また私服警察を名乗るものもいますが、それも99.9%偽物です。

また警察手帳も信用できません。
実際に私がネタで購入したものですが、観光客でさえその手の店にいくとイタリア警察のIDホルダーを購入できてしまいます。
というわけで、なかなか素人には本物と偽物の区別ができないのですが、最低でも本物の警察は常に2人以上のグループで制服を着用し、ピストルや機関銃などの火器・重火器を携帯しています。
警察を名乗るもの話しかけられ本物か区別が自分で区別がつけられない場合には、駅窓口や警察事務所に行くことを提案し誘導してください。
g. 車内の紙配りに注意
車内であってもスリなどの犯罪は頻発しています。
特に「ジプシーの手紙」と呼ばれるものがあり、車内で紙を配りながら車内を徘徊し、その間にターゲットを物色しているジプシーも多く報告されています。
間違っても車内で一人で睡眠をとったりなどはしないようにしてください。
h. イタリア人の近くに相席

イタリアで観光客相手の犯罪をおこなうものの多くがロマ(ジプシー)や不法移民をはじめとした外国人です。
そのため座席指定がない列車に乗る際には、イタリアの現地の人の目の届く範囲、理想を言えば相席をするのがおすすめです。
イタリアの列車は多くがボックス席となっていることも多いので、ある程度人の目が届く場所にいることを心がけてください。
i. 特急列車の方が安全
各駅停車と特急列車を比べた場合には特急列車のほうが安全です。
座席指定のため、不法乗車はある程度防がれている点、そして車掌による車内循環や検札が行われているため、ジプシーの乗車はほとんど見られません。
ですが、それでも油断はできないので最低限注意は払っておきましょう。
j. 駅を離れた後に注意
イタリアは日本人観光客にも大人気ということで、海外旅行に不慣れな人も多く訪れます。そのため、注意意識を怠ったが故に犯罪に巻き込まれたりする人も多くいます。
特に深刻なのが、日本人の「その場をまるくすませる」という態度。多くの日本人観光客が何かあった際に金銭を簡単に渡してその場を済ませようとしている実態があり、これが次の犯罪を誘発しています。
そのため、日本人は格好のターゲットとも考えられてる場合が多く、駅構内で見つけた日本人の後をつけ、路地や人通りの少ない場所に入った際に半ば強引な手段で所持品を奪おうとする犯罪が多発しています。
駅を離れたのちしばらくは周囲に十分注意する、危険を察した場合にはなるべく走って逃げる、もしくは声を出すなどし、必ず人通りの多い場所を行くようにしてください。
また、駅からホテルなどに向かう際に路地を避けられない場合や夜間の移動になる場合には、たとえ短距離であってもタクシーなどを利用することも検討してください。
k. 荷物に注意
大都市のターミナル駅で非常によくある問題に、大きな荷物を持った人が列車から降りた瞬間に荷物を勝手に台座などにのせ運ぼうとし、チップを払わないと返さないという犯罪があります。
荷物から決して手を離さず、第3者の手が決して触れないように細心の注意を払ってください。
またスーツケースなどを持っていると、俊敏な行動が取れなくなるということで、それだけでも犯罪者のターゲットになるので要注意です。
7. 最後に
今回はイタリア全土に路線網をもつトレニタリアの利用方法と注意点を紹介しました。
鉄道大国ということだけあり、鉄道システムは非常に洗練されており観光客でも気軽に利用できる一方、駅などでは治安上の問題も多いのでしっかりと身の回りに気をつけた上で利用するようにしてください。
特に近年イタリアは難民、移民問題が深刻で、ターミナル駅での治安悪化は以前よりもさらにひどくなり、ほとんどコントロールができていない状態になっています。
私は北極圏から旧ソ連・旧ユーゴスラビアまで先進国から貧困国まで多くの国で鉄道を利用しましたが、その中でもイタリア鉄道はかなり難易度とストレスの多い鉄道網だと言わざるを得ないという感想を持ちました。
大げさに聞こえるかもしれませんが、イタリアのターミナル駅を利用する場合には今回紹介した注意事項のいくつかを必ず経験すると断言できます。楽しみな旅行が台無しにならないよう、最大限の注意力と知恵を持って鉄道を利用するようにしてください。
Shunさん、 昨日イタリアから帰国。おかげさまで、ローマでは、鉄道や地下鉄、バスに乗ることができました。鉄道のチケットは、見通しの良い設置箇所のマシーンを選び購入しましたが、カードを受け付けてくれなくで、結局ユーロ紙幣を使用。鉄道は発車直後車掌さんが検札に来ましたが、ご指摘にあったように改札機を使用したので、問題ありませんでした。日本とは異なっているので、教えていただき助かりました。もちろん、常に周囲に注意するよう心がけました。でも、誰も話しかけてこなかったなー。
無事のご帰国何よりです。今は観光オフシーズンなのもあってもしかしたらそういう人少なかったのかもしれませんね。
でも今日のリツイートでローマの駅でポケットから勝手に1ユーロもぎ取られたって報告ももらったので本当に運とかの問題なんだと思います。
ありがとうございます。気をつけます。自分の周囲にバリアを設定します。確かに、日本人=ツーリストで 目立ちますよね。ところで、ローマ市内の地下鉄はいかがでしょうか?
日中は大丈夫だと思いますが、それでも他国と比べればかなり治安の悪さは際立っています。特に駅構内。車内も物売り、スリ、物乞い頻繁に見かけると思います。。。
シュンさん、いつもサイトを読ませていだだいています。
来週月曜からイタリアへ行きます。ローマから短いのですが、電車に乗る機会があるので、注意事項役立ちました。ちょっと怖いですね。実際私の知人は、長距離列車内でスースケースを盗まれてしまいました。カモにならないよう、注意して気を引き締めて安全な旅になるよう心がけます。
イタリアの駅は本当に超要注意、絶対に話しかけてくる人を信用しない、相手にしない、身の回りから絶対に目を離さないよう注意してください。