リトアニアの第2の都市、カウナス。ここカウナスには杉原千畝という元駐リトアニア領事が「命のビザ」を発給した地として有名で、町中いたるところに杉原千畝の所縁のある場所や記念碑を見つけることができます。
特に、元日本国在カウナス領事館は現在杉原千畝記念館として、日本人はもちろん東欧諸国の人々、ユダヤ人を中心に多くの人が訪れる観光名所となっています。
さらに2018年1月には日本国総理大臣であり外交に力を入れている安倍首相が、歴代総理大臣として初めてリトアニアを訪問し、その際にこの記念館を訪れたことでも知られています。
今回は、そんな杉原千畝記念館に実際に足を運んでみたので、展示などを中心に杉原千畝の功績を紹介します。
1. 杉原千畝記念館へ
杉原千畝記念館は、市内中心部から少し離れた住宅街の中にひっそりと建っています。
カウナスの中心部から行く場合には、公園を抜け、階段を上がり、坂を登りきり、さらに住宅街を歩き、、、と場所がわからないとやや不安になるような道のり。住宅街に入ると、看板が出てきます。
看板に従って歩くと記念館に到着。
杉原千畝記念館はもともとの領事館そのものの建物ということですが、住宅街の中にあるごく普通の一軒家であるため、知らないと通り過ごしてしまうようなくらいひっそりと佇んでいます。
建物の維持や管理もほとんどがボランティアと寄付金で賄われているんだとか。
現在は1階部分が展示スペースになっていますが、将来的には2階部分も改装工事を行いスペースを拡張する準備を進めているようです。
2. まずはビデオ鑑賞
まず入場料を払いチケットを買うと、小さな上映室へと案内され約15分程度のビデオを鑑賞します。
杉原千畝がリトアニアにやってきた経緯や、命のビザ発給に至る社会背景や危機が迫る様子、命のビザを受け取った人々の軌跡、杉原千畝の退官後の人生などなど。
少し古い映像でしたが日本語の音声付きということもあり、杉原千畝に関して簡単に理解することができました。
3. 領事室で歴史を学ぶ
記念館内では、流暢な日本語を話すリトアニア人の青年職員が事細かに杉原千畝について説明してくれました。
彼は大阪大学に留学していたとのこと、リトアニアと日本の架け橋をしてくれています。
現在は職員として記念館に訪れるすべての人にそれぞれ杉原千畝の功績や当時のリトアニア人の状況などを説明しているようで、日本人としてとても嬉しくなりました。
当時の領事室には、世界大戦中のリトアニア人や周辺国から逃げてきたユダヤ人達の苦難について、当時の社会背景について等の歴史を中心に幅広い展示がありました(上画像 クリックで拡大)。
全て日本語、英語、リトアニア語での解説がついているので、語学に不安がある方も心配いりません。
当時のユダヤ人のパスポート。ドイツに生まれドイツ国籍にもかかわらず、ユダヤ人(ユダヤ教徒)の血を引くだけで「J」のスタンプが押され、差別される存在だったことが一目でわかります。
そして、杉原千畝がそんなユダヤ人をジェノサイドの危機から救うために発行した通過ビザ、通称「命のビザ」のコピーと実物の展示も。
1枚1枚全て手書きで書かれており、この手書きのビザをわずか1ヶ月間余りの間に2000通以上書いたという杉原の人道支援への気持ちには言葉が出ません。
4. 杉原千畝の私生活
杉原千畝記念館には、あまり取り上げられることの少ない杉原千畝の生い立ちや家族の私生活、カウナスを離れた後の一家の成り行きについての展示も1部屋全てを使って広く行われています。
激動の時代の中においても家族団欒の写真がしっかりと残っているところをみると、杉原千畝も1人の領事としてだけでなく1人の人間として過酷な時代を生き抜いた人なんだと強く感じました。
また杉原の子供達のその後や進学先などまでかなり踏み込んだところまで紹介しているのが驚きです。
5. ユダヤ人の足跡
杉原千畝が発行した命のビザを幸運にも手に入れ、日本を経由して第3国へと脱出したユダヤ人達のその後の足跡も実際の写真と共に紹介されています。
その多くがアメリカやカナダ、イスラエル等に脱出する中、日本にとどまった者などさまざま。幸運にも命を守り抜いたユダヤ人達でさえ、世界大戦終了後も歴史に翻弄され続けた苦悩が伺えます。
杉原千畝はよく「日本国の指示に逆らって独断でビザを発給した」という設定にされることが多いですが、実際にほとんどの通過ビザ保持者は日本行きの船への乗船・入国が認められており、当時の外務省も暗黙の了解であったというのが現在の通説です。
あからさまに公認すると同盟国であったドイツとの関係もあったことから難しい判断であったことには違いありません。
6. 世界中からの訪問者
言うまでもなく杉原千畝という人物を追って訪れる日本人の数は多く、日本地図にはびっしりと訪問客の出身が。
ちなみにリトアニア旅行中に日本人を見かけたのはこの記念館でのみ。やはりリトアニアに足を運ぶ日本人にとっての大きな目的の1つがこの記念館なのでしょう。
ですが、驚いたことにかなり海外からの訪問者もかなり多い印象。
話によるとリトアニア人だけでなく、ロシア人、ポーランド人なども結構多く訪れるとのことでした。実際私が訪問している際にはフランス人カップル1組とアメリカからの旅行者も。
決して華やかな博物館ではありませんが、海外からの人にも日本人の功績が注目してもらえるというのは、勝手ながら同じ日本人として嬉しくなります。
そしてさらに驚いたことがもう1つ。実は私が訪れた際に、最初の十数分ちょっと待機しなければならないという場面がありました。それはリトアニア人高校生が授業の課外学習の一環として訪れていたため。数十名の大人数グループがビデオを見た後、展示の説明を受けながら館内見学をしていました。
彼らの祖国であるリトアニアという国の歴史を学ぶ中で、杉原千畝の功績をしっかりと世代を超えて伝える教育をしているのを見ると嬉しいかぎり。
リトアニアと日本を現代にいたるまで強い絆で結び、そして私たち日本人が日本人として誇りを持てるようになるような決断をしてくれた杉原千畝に感謝する他ありません。
7. 日本人に大人気なお土産
杉原千畝記念館の受付部分には簡単なお土産販売コーナーも。この場所、リトアニアで唯一日本円をそのまま使うことができる場所でもあります。
チョコレートなど定番のお土産がずらり。物価を考えると日本人価格になっていることは否めませんが、お土産にぴったりな杉原千畝が描かれたパッケージのものなど様々。
この売り上げはそのまま運営費や修繕費に使われるとのことなので、寄付がてらお土産をここで買ってみてはいかがでしょうか。
8. 最後に
いかがでしたか?
やはり日本人としては杉原千畝の功績を讃える意味も含めて杉原千畝記念館を訪れるべきですし、世界大戦中ユダヤ人の身に何が起こっていたのかを知る義務があると思いました。
2015年に公開された映画「Persona non Grata 杉原千畝」も、杉原の功績をわかりやすく描いているのでおすすめです。
今回は紹介できなかった展示もまだまだ数多くあるので、リトアニア旅行の際にはカウナスにある杉原千畝記念館まで足を伸ばしてみてください。
また、内部を案内してくれたリトアニア人の青年によると、旧居住スペースだった2階部分を同じく展示室として改装、公開へ向けて準備をすすめているんだとか。
また建物の維持管理だけでもかなりのお金がかかっているため、諸機関からの寄付や来場者からの入場料や寄付が非常に重要なんだそう。
最近ではNHKで放送された「闘魂ペインターズ」というペンキ屋ボランティア集団による外壁修復が話題になりました。
というわけで、是非記念館を訪れた際には次の世代へ残して行くためにも寄付もお願いいたします!
他にもカウナスには日本とリトアニアをつなぐものが数多くあり、観光名所になっています。
どうぞこちらの記事も参考にしてみてください。
- Expedia:ホテル:メトロポリス
- Hotels.com:ホテル・メトロポリス
カウナスで宿泊するなら絶対におすすめしたいのがホテル・メトロポリス。あの杉原千畝が出国直前まで滞在し命のビザを書き続けたという歴史を動かしたホテルです。
客室は非常に清潔に保たれていますが所々歴史を感じる内装があったりと、日本人としてとても感慨深くなるホテル。宿泊料金も非常にお手頃なので是非滞在してみてください。
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