ディクテーションと聞いてみなさんはどのように思うでしょうか。リスニング力を鍛えるためのトレーニングとしては大変有名で、実践されている方も多いとおもいます。
多く反論等あると思いますが、個人的にはIELTSというテストのためにディクテーションを行うことに関しては反対の立場です。誤解をして欲しくないのはディクテーションは大変効果的なトレーニングということは事実です。
ですが、IELTSやTOEFL等、テスト対策のために行うということに限って言えば、やはりデメリットがメリットを上回るように思います。
今回は個人的な経験を踏まえ、ディクテーションをお勧めできない5つの理由をご紹介します。
1. 時間がかかる
一番ベーシックなディクテーションというと、
- レコーディングを1〜2センテンス聞く
- 覚えてる範囲で紙に書き取る
- 同じ所を聞き直す
- センテンスを完成させる
ということをひたすら繰り返すことになります。当たり前ですが、ただ口を動かすシャドーイングと比べても、書き出す分非常に長い時間がかかります。
例えば個人的な経験だと、ListeningのPart1のディクテーションでも最初から最後までしっかりやると、やはり1トラックに1時間はかかります。Part4になってくるとさらに時間がかかり、しかも気づくと無意識の流れ作業になってきます。
IELTSの試験対策はリーディング、リスニング、ライティング、スピーキングのバランスが重要で、いかに「効率良く」行うかが重要だと私は思っていますので、この1本への時間のかかり方はデメリットそのものです。
また労力も大きいので、その後の他の学習に影響するでしょう。
PCでディクテーションを行うとその分時間の短縮にはなるかと思いますが、それでも時間がかかります。
またタイピングでスペルの書き取り等するので、そういう意味ではIELTS対策にはならないように思いますし、後述するようにそもそもスペルの習得をディクテーションで行うというのは無理のあることです。
2. 繰り返しの定着効果が弱い
また、シャドーイングの記事でも触れてますが、リスニング試験対策としては「とにかく毎日繰り返して同じトラックを聞く」ということが重要です。
ディクテーションをメインに行う場合、1日に1トラックやるのが精一杯なのが現実です。となると、今日はAというトラックを何十回も聞いて耳にタコを作っても、次の日にはBというトラックを聞き続けることになり、数日後にはAのトラックの内容を完全に忘れる、なんてことが起こります。
となると、本ブログでおすすめしている、「連日同じことを繰り返し定着させる」ということができません。
一方シャドーイングの場合、気づけば暗唱できるくらいにまでなってくるので、やはり短期間で結果を出すという意味では間違いありません。
私は毎日シャドーイングの練習を行い、慣れてある程度シャドーイングが出来るようになってきたころには20〜25トラックをすべて最低1回シャドーイングしてから寝る(約1時間超)という生活をしてました。
その甲斐もあり、シャドーイングを開始してから約3ヶ月後にはcollinsのテキストの模擬テスト15トラック分近く、リズムや訛りも含めて暗唱出来るように自然となっていました。
3. 長いリスニングへの対応不足
ディクテーションの場合は、1本のリスニングセクションを細かく切って、同じ所を何度も聞くことになります。ですが、実際の試験はレコーディングは止まることなく、1〜3分程度連続して再生され、そしてもちろん繰り返されるということはありません。
つまり非常に集中してレコーディングの最初から最後まで聞き続けるということが必要で、実はこれにはかなりの労力を伴います。
よってディクテーションばかり行っていると、短いセンテンスは聞けてもレコーディング全体を集中して聞き続けるということに無意識のうちに弱くなってくる可能性があります。
一方で、シャドーイングでは慣れてくるまではやはり短く区切ったセクションで練習することになりますが、最終目標はレコーディング最初から最後までノンストップで耳と口を動かし続けるということになります。
よってシャドーイングのトレーニングは試験中の全体を通して聞き続けるという力が著しく付きますので、私としてはシャドーイングがおすすめです。
4. スペルへ対応
ディクテーションをするとスペルを覚えるから効果的だ、という人がいます。果たしてそうでしょうか。
手書きでディクテーションをしている場合、実際に起こり得るのが字を綺麗に書く余裕がないので殴り書きに近くなり、結果無意識にスペルミスを見逃している、もしくはそもそもスペルを間違っていることに気づかないということがあります。
これではせっかく紙に書いている意味があまりありません。
またPCを使ってディクテーションをしている場合は、自動変換機能をオフにしておけば一応スペルミスに気付くことができます。
その場合はキーボード上で修正するか、あるいは「右クリック」で自動修正をすることになります。ですがあまりに簡単に訂正できるため脳に記憶として残すには不十分です。
またキーボードではわかるのに手書きにするとなぜか書けない、という「漢字」でよく起こることが発生します。脳って本当に面白いのですが、なぜかキーボード配列ではわかるのにいざ書こうとすると、あれ???ということが起こるのです。
一番簡単な所だと「believe」「receive」、PCでは変換機能もあり滅多にスペルミスは起こりませんが、手書きで書くとこの「ie」の順番を間違えて逆にする人が実際結構いるのです。
よってディクテーションをしてすべて書き取るということには現実的にスペル習得にはならないのです。やはり単語力を上げるためには当たり前ですが単語帳や読解を通して習得する必要があります。
5. 他セクション対策への影響
一度試されたことのある方はわかると思いますが、ディクテーションはかなり負荷のかかる疲れる対策方法です。
軽く既に触れていますが、ディクテーションを1時間行った後、ライティングでエッセイを書く気にはなりません。と同時に、長文読解を集中して行ったりあるいは精読を行うという気分にも正直なりません。
事実、一時期ディクテーションの評判に惑わされ2週間ほど取り組んだ時期がありましたが、その際は他のセクションの対策をほとんど進めることができなかったと今改めて思います。
やはりIELTS対策全体へのバランスを考えると、ディクテーションは負担が大きすぎると言えます。
最後に
「ディクテーションは効果が高い」、この謳い文句自体には私も同意します。おそらく高負荷な分、長く継続して行えば確実に力がつくのだとは思います。
ですので単純にリスニング対策だけを考えた場合にはいいトレーニングなのは間違いないと思います。実際に色々リスニング力向上の報告がありますし、本もたくさん出ています。
ですが、皆さんはおそらくIELTS対策のためのリスニングの学習であると思いますし、つまり短期間で確実に結果を出さないといけない受験生なわけです。
事実私が一時期通った予備校の先生もシャドーイングをとにかくやること、「ディクテーションは皆さん向けじゃない!」と叫んでましたが、事実そうでした。
私も無事に短期間でL5.5→7.0を取り留学を果たしていますのでただ単にIELTSのためであればシャドーイングだけで十分です。唯一ディクテーションをする価値があるとおもうのが数字や住所の書き取り、これについてはこちらの記事を参照してください。
もしあなたがIELTS8.0以上を狙う、TOEIC満点を狙う等、趣味としての語学学習であればディクテーションは有意義です(本音いうとディクテーション完璧に出来てもBBCが聞き取れるとかネイティブの日常会話が普通に全部わかるとかには全くなりません。)
あくまでレコーディングと生英語は違います。
ですがIELTSのスコアを少しでも早く獲得するという目標に対しては、やはりシャドーイングに軍配が上がります。是非効率のいい学習を心がけてください。
英国及び北欧で修士・博士課程を終了し、IELTSオーバーオール8.5の筆者が皆様のIELTS対策を直接サポートします。
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